みかん小説
本棚

"20年後、坊ちゃんは帰ってきた" 第7話

「昔の奥様は本当にいい方だったよ。へ来れば、私たちにも普通にげるだった」

女将はため息をついた。

「今の奥さんになってからは、あのも随分変わったけどね」

千鶴子は子をくかぶったまま聞いた。

「会社の方も変なんですって?」

「倒産するんじゃないかって噂だよ」

さらに、昔敷で警備をしていたという老にも会うことができた。

彼は千鶴子に気づかなかった。

「会ももう駄目です。しい奥さんと息子に何でも許して、会社までい潰されてしまった」

千鶴子はそれ以聞かなかった。

通りだった。

いや、予だった。

、千鶴子は理恵がよく利用する百貨へ向かった。

変装したまま、わざとくを歩いた。

理恵は派装で現れた。

20より歳はねていたが、傲な歩き方は変わっていなかった。

千鶴子が通ち止まると、理恵は苛った声をした。

「ちょっと、邪魔よ」

「申し訳ございません」

千鶴子はし声を変えてげた。

理恵は顔さえ覚えていなかった。

その、理恵の携帯話が鳴った。

「もしもし。輝の件でしょう?」

千鶴子はくのベンチへ腰をろした。

「またおが必なの? 会社のおで処理すればいいじゃない。から帳簿をわせれば分からないでしょう」

千鶴子はさな録音を作させた。

広告

理恵は周囲を警戒することさえなく、息子の損失を会社資で穴埋めする相談を続けた。

その夜、千鶴子は録音を優に聞かせた。

っていた以ですね」

の顔から笑みが消えた。

「これだけではりません。会社の正式な記録と結びつける必があります」

「すでに専に確認をお願いしております」

千鶴子は別の資料を置いた。

そのには自然な資や、関係会社を介した支覧があった。

はページをめくり、静かに頷いた。

その、パソコンにしいメールが届いた。

グループからだった。

《黒札様。どうか弊社をお救いください。経営権を含め、必な条件は全て検討いたします》

は画面を見たまま言った。

「千鶴子さん。返事をしましょう」

提示した条件は単純だった。

巨額の資を入れる代わりに、グループの主株式と経営権を担保へ入れること。

定条件を満たせなければ、黒札側が経営権を取得する。

側の返事は翌に届いた。

受諾。

千鶴子はしばらく画面を見ていた。

「本当に署名するとはいませんでした」

「追い詰められれば、は自分に都のいい部分しか見なくなります」

は静かに言った。

「父は、黒札が自分を救うだとっているのでしょう」

「実際には?」

は千鶴子を見た。

「会社を救うつもりですよ」

広告

千鶴子はし驚いた。

「ただし、今の経営者からは取りげます」

グループ本社の会議には、朝からい空気が漂っていた。

黒札側の代表者が初めて直接現れ、最終契約を交わすだった。

座に座っていた。

20より回りさく見えた。

髪が増え、頬はこけ、机のへ何度もを伸ばしている。

理恵はその隣で、相変わらず派につけていた。

「あなた、そんな顔しないで。黒札様が投資してくださるんだから、もう助かったのよ」

輝も同席していた。

しかし危く、携帯話ばかり触っていた。

10

会議の扉がいた。

先に入ってきたのは、黒いスーツを着た若い男だった。

そのろから、背筋を真っ直ぐ伸ばしたの女性が続いた。

理恵の顔が凍りついた。

「あなた……」

千鶴子は子も鏡もしていなかった。

20より髪にいものが増えていたが、理恵には分かった。

千鶴子……?」

「お久しぶりでございます、理恵さん」

理恵は子を蹴ってがった。

「何であんたがここにいるのよ!」

理事たちは訳が分からずを見比べた。

は千鶴子よりも、そのつ青を見ていた。

何かが引っかかるようだった。

「黒札様はどちらに?」

が尋ねた。

が静かに答えた。

「私です」

ざわめきが広がった。

は会席の向かいへ腰をろした。

「本つ、誤解を訂正しなければなりません」

千鶴子が分類を机へ置いた。

「私はあなた方を救済するためだけに来たわけではありません」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: