"20年後、坊ちゃんは帰ってきた" 第6話
やがて顔をげた。
「千鶴子さん」
「はい」
「母さんは、おを残したかったんじゃないといます」
「私もそういます」
「僕たちが、誰かに捨てられても自分でてるを残したかったんだ」
千鶴子は微笑んだ。
8歳の、泣きながら自分のを掴んでいた子供は、もういなかった。
「坊ちゃん。では、このおを切に育てましょう」
優も笑った。
「はい。母さんが11守ったものを、今度は僕たちが育てます」
優は名学の経済学部へ学した。
代から融や経営の本を読み続けていた彼にとって、学は識を得る所であると同に、脈と実務を学ぶ所でもあった。
千鶴子も再び勉を始めた。
会計、契約、税務。
優の隣にち続けるには、自分自も変わらなければならなかった。
は恵子の資産を元に、さな投資会社を作った。
初めからだけを狙ったわけではない。
経営難に陥った企業へ資を入れ、経営をて直す。
優は数字を読む力だけでなく、会社のに残っている技術や材を見る目にも優れていた。
倒産寸の会社をく買い叩いて切り売りする投資とは違った。
まだ再できる会社なら、必な資を入れ、経営陣を替え、社員を残した。
それが評判になった。
やがて融業界で、正体の投資について噂が広まり始めた。
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誰も顔を見たことがない。
取材にもない。
しかし、その投資がを入れた企業は議なほど再する。
々は彼を「黒札」と呼ぶようになった。
黒いカードを枚置くだけで、企業の運命を変える。
そんな噂からまれた呼び名だった。
優はその名を否定もしなかった。
ただ、表台には切なかった。
契約のくは代理を通じてい、千鶴子が裏側で全ての報を理した。
優が28歳になる頃には、が管理する資産は、かつて像もできなかった規模へ成していた。
そしてその、本のグループは反対のを歩んでいた。
理恵は会社のを自分の財布のように使った。
旅。
宝。
級ブランド。
派なパーティー。
息子の輝もまた、継者として会社を学ぶより遊興にになった。投資に失敗して額の損失をしても、理恵は会社の資で穴埋めした。
隆は止められなかった。
理恵の実との関係。
自分の過。
会社の体面。
言い訳をねているうちに、問題は取り返しのつかない規模へ膨らんでいた。
ある、千鶴子は財務資料を机へ置いた。
「坊ちゃん。グループの負債が危険な準へ入りました」
優は数字を見た。
「あと何です?」
「何もしなければ2、3でしょう。ただ、資繰りだけならもっとくき詰まる能性があります」
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優はしばらく黙っていた。
窓のにはニューヨークのが広がっていた。
「待ちましょう」
「助けないのですか?」
「まだです」
優は静かに答えた。
「自分たちから助けを求めるまで待ちます」
千鶴子には分かった。
これは単なる復讐ではない。
20、自分のを度も聞いてもらえないまま追いされたが、今度は相の方から自分のへ来るを待っているのだ。
数か。
グループから、投資へ資本支援を求めるきが始まった。
そしてついに、黒札の会社へ通の依頼が届いた。
《弊社は現、な資調達の問題を抱えております。条件は能な限り受け入れますので、度ご検討いただけないでしょうか》
差。
隆。
優はその名をい見つめた。
「坊ちゃん」
千鶴子が呼んだ。
優はゆっくり顔をげた。
「20、僕が何度お願いしても、父は度も振り返りませんでした」
声は穏やかだった。
「今度は向こうが、僕たちにお願いする番です」
優と千鶴子は、20ぶりに本へ戻った。
帰国したことは誰にもらせなかった。
空港から向かったのも級ホテルではなく、京郊に用したさなマンションだった。
「まず私が様子を見てまいります」
千鶴子は昔の敷くへを運んだ。
20のにはきく変わっていた。
それでも、商の部には昔からのが残っていた。
魚の女将に何気なくの話を振ると、恵子の名がてきた。