"20年後、坊ちゃんは帰ってきた" 第5話
そのから、優は変わった。
放課は図館へ通い、英語、数学、科学、歴史、経済と、に取れる本を片端から読んだ。度理解した内容を驚くほど正確に覚えており、教師たちも次第に彼の能力へ注目するようになった。
、優は学でも位の成績を取るようになっていた。
その夜、千鶴子は久しぶりに恵子の記帳を取りした。
最のページには触れず、最初の数ページだけをいた。
そこには恵子の常がかれていた。
そしてだけ、千鶴子へ向けられたような言葉があった。
《は投資と同じ。持っている番尊いものを、未来のために使いなさい》
千鶴子は隣で眠る優を見た。
自分が持っている番尊いもの。
それは、この子を守るために使えるだった。
そして優が持っている番尊いものは、恵子が言う通り、その才能なのかもしれない。
「坊ちゃん。まだ先はいですよ」
千鶴子はさく呟いた。
「でも、必ず派になりましょうね」
それから11が過ぎた。
8歳だった優は19歳になり、背のい青へ成していた。
の卒業式の、千鶴子は堂の仕事を終えてから会へ駆けつけた。きちんとした礼を買う余裕はなく、古い着を羽織っただけだった。
式では、卒業たちが族から束を受け取っていた。
父親と肩を組む徒。
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母親に抱き締められる徒。
優には、そのどちらもいなかった。
名を呼ばれて壇へがった優は、卒業証を受け取ると客席を見回した。
そして会の隅につ千鶴子を見つけた。
優は卒業証をく掲げた。
千鶴子にだけ見せるように。
千鶴子の目から涙が溢れた。
式が終わると、優は真っ先に千鶴子のところへ来た。
「千鶴子さん、来てくれたんですね」
「当たりです。坊ちゃんの切なですもの」
優は荒れた千鶴子のを取った。
の皿洗いで、指にはさな傷が何本も残っていた。
「このがあったから、僕はここまで来られました」
「私は何もしておりません」
「それを言ったらりますよ」
優が笑った。
その夜、は狭い部のさな卓を挟んで座った。
千鶴子は11守り続けた記帳を置いた。
「坊ちゃん。もうけてもいい頃でしょう」
最の革表は、やはり自然にかった。
千鶴子が慎に縁を調べると、革がになっている部分があった。傷つけないようさなナイフを入れると、その内側からい類が現れた。
枚ではなかった。
株式関連の類。
信託の証。
融関の座報。
そして、弁護士事務所の名が記された封。
は言葉を失った。
最に、通のがてきた。
千鶴子は震えるでいた。
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《千鶴子さん。あなたがこのを読んでいるということは、優がになったのね》
それは違いなく恵子の字だった。
《ありがとう。あなたなら、私の息子を最まで見捨てないと信じていました》
千鶴子はそこで度、読むのを止めた。
涙で文字が見えなくなったからだ。
恵子は自分のに起こることを予していた。
隆が理恵を敷へ入れること。
理恵が優を邪魔者として扱うこと。
によってはから排除しようとすること。
そのため、恵子は結婚に実から譲り受けた個資産の部を、信託へ移していた。
夫から切りした財産だった。
ただし、優が成し、指定された条件を満たすまで自由にかせないようにしていた。
《幼いままをにすれば、あの子自が壊れるかもしれない。だから優が、自分の力できられるになるまで待ってほしいの》
最には、こうかれていた。
《千鶴子さん。もしあなたが優をここまで育ててくれたのなら、この財産はあなたと優が使ってください》
優は黙ったままを読んでいた。
「母さんは……っていたんですね」
「ええ」
「僕が追いされる能性まで」
千鶴子は頷いた。
さらに弁護士へ連絡し、正式な確認をめると、は資産の規模をることになった。
恵子が残した資産は11運用され、きく成していた。
グループの関連株式を将来に取得できる権利も含まれていた。
優はい、類を見つめていた。