"質屋で知った夫の嘘" 第2話
私が顔を見ると、慎介はを向いたままだった。ただ、だけが真っ赤になっていた。
結婚活は質素だった。旅と呼べるものは婚旅でった千葉の潮見町くらいで、誕にいものを贈りったこともない。それでも毎朝、私より30分く起きた慎介がコーヒーミルを回す音で目を覚まし、台所へけば2つのカップが並んでいた。
「自分の分だけでいいのに」
「1でむと苦い」
理屈になっていない返事だった。
私が邪を引けば、の濃すぎるお粥を作った。残せば何も言わず自分でべ、私が「まずいでしょう」と笑うと、「いよりましだ」と真顔で答えた。
おはなかった。それでも私は、このとなら穏やかにを取っていけるとっていた。
だからこそ、3のあの、玄関で指輪をのひらに押し込まれたとき、慎介が言った言葉を、私は許さないつもりだった。
――売って活しろ。
そして3、本当にそういうだったのだと信じてきた。
目のにいる戸田さんが、その3を丸ごとひっくり返すまでは。
慎介の様子がおかしくなったのは、結婚4目のだった。
きっかけは父親のだった。夜10を過ぎた頃、慎介の携帯に話が入り、普段なら部で話すが玄関のへていった。10分ほどして戻ってきた慎介は、コートを脱ぐこともせず、見たことのない顔でっていた。
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「どうしたの?」
「親父がんだ」
私は言葉を失った。
「いつ?」
「先週。今、もう焼いたらしい」
くなってから1週、葬儀も葬も終わるまで、実の息子である慎介には何の連絡もなかったという。それでも慎介は「向こうにも事があるんだろう」と言っただけで呂へ入り、翌朝もいつも通りコーヒーを入れた。
慎介の実には、結婚の挨拶で度だけったことがあった。から玄関までい敷が続く古い本で、てきた父親は私を値踏みするように見たあと、慎介にい声で何かを言った。へげられることも、お茶をされることもなく、30分もしないうちに帰ることになった。
「あののことは忘れていい」
帰りで慎介はそう言った。当の私は、族の事へ無理に踏み込まないことが優しさだとっていたので、それ以聞かなかった。
父親がくなってから、夜に話が鳴るようになった。慎介は寝をて玄関でい声で話し、10分か15分すると何もなかったように戻ってくる。誰からか尋ねても「仕事」と答えたが、夜の2に仕事の話が何度も来るはずがない。
ある、洗濯物を片付けていた私は、慎介の鞄からい封筒が覗いているのを見つけた。病院の名が印刷されていたが、私は引き抜かなかった。本が話すまで待とうとったものの、それから1週経っても慎介は何も言わなかった。
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続いて、自宅へ法律事務所からい封筒が届くようになった。慎介はそれを必ず自分で郵便受けから取り、封したを細かく破って捨てていた。父親のと関係があるのだろうとはったが、そこにも私は踏み込めなかった。
その頃から、慎介は急に痩せ始めた。にはベルトの穴が2つ内側へ移り、ご飯の量も半分になった。私が病院へったのかと聞けば、「った。何ともない」と笑う。
慎介は笑うのがだった。無理に笑うと、元だけがいて目がこちらを見なくなる。
には会社をに2、3休むようになった。休みのは朝からかけ、夕方に戻ってくるので、私は度だけをつけたことがある。3つ目の駅で慎介がり、私もしれてホームへりると、階段ので慎介が振り返った。
誰かを探しているような目だった。
私は柱のに隠れ、そのまま追うのをやめた。あのとき慎介は誰かを探していたのではなく、誰にも見られていないことを確認していたのだと、今なら分かる。
10の終わり、慎介は突然「潮見町へくか」と言った。婚旅で泊まった辺の町で、私は嬉しくなってい民宿まで調べたが、3には「やっぱりやめよう」と言われた。
「どうして?」
「仕事がちょっと」
「じゃあ来のでもいいよ」
慎介は瞬だけ黙り、「そうだな」
と答えた。
その夜、私は眠れなかった。