"亡き義母の口座を洗う女" 第5話
しかも、毎回すごく独特な歩き方をするでしょう?」
佐々さんも気づいていた。あの女の「異常さ」に。
「には内緒ですよ。バックヤードで確認しましょう」
佐々さんの導きで、私は舗奥の狭い事務に入った。壁に並んだモニターに、昨夜の映像が呼びされる。
『08-26 00:06:45』
自ドアがき、あのエンジのカーディガンの女が入ってきた。
画面越しに見ても、その異様さは際っていた。首のろを擦る作、脚を引きずる歩。画面のタイムスタンプが『00:07:12』を指した、女はATM端末にカードと通帳を差し込み、慣れたつきで暗証番号を入力していた。
「ほら、これです。暗証番号を打つ、度も迷わないんですよね」
佐々さんが画面を止し、女の元を拡した。
画質は粗いが、画面いっぱいに女のが表示される。テンキーを押す細い指。その指に、っぽい silver のリングがっていた。
それを見た瞬、私の全の血が引いていくのが分かった。
「……嘘……」
「奥さん? どうしました?」
「このリング……」
歪んだ楕円形のデザイン。表面に刻まれたさな傷。
それは、義母が認症になる直まで肌さず着けていた、き義父からの唯のプレゼント——あの『の指輪』だった。
義母がくなった、遺品理の際にどうしても見つからず、紛失したとっていた指輪。
なぜ、赤のの女がそれを嵌めているのか?
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「佐々さん、お願いです! 画面をもっと拡できますか? 女の顔……顔が見たいんです!」
佐々さんはマウスを操作し、女がをる瞬の防犯カメラの角度に切り替えた。
灯のに照らされた女の顔が、画面に映しされる。
痩せた頬、かさついた唇、どこか虚ろな目元。
そして、その首筋——側の首の根元に、直径5ミリほどのきな『黒いホクロ』があった。
「……あ」
声にならない鳴が漏れた。
ホクロの位置。首を擦る癖。脚を引きずる歩。義母のカーディガンと指輪。
体特徴のすべてが「坂本子」そのもの。
だが、顔の造形そのものは、代半ばのまったくの別。
まるで、『坂本子』というの体データをそのまま別の女に移植したかのような、狂気の景だった。
「奥さん……丈夫ですか? 顔が真っ青ですよ」
佐々さんの配そうな声がく聞こえる。
私は確信した。
あの女は、単に義母のを着ているだけではない。
義母の「癖」も、「遺品」も、「個報」も——すべてを図に与えられ、『坂本子』として振るうトレーニングを受けた形なのだ。
そして、その形に義母の指輪とを買い与え、現に送り込めるは、世界にただしかいない。
夫・坂本雅志。
私は震えるでスマートフォンを取りし、画面に映る女の顔と指輪の静止画を、で写真に収めた。
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胸の悸が収まらないまま、私はコンビニをにした。ののスマホには、あの女の首筋にあるきなホクロと、指にる義母の遺品——の指輪の写真が保されている。
違いなく、雅志が関わっている。
曜の午。雅志は会社に勤しており、帰宅はくても夜8過ぎだ。今なら、あの男の「聖域」を探ることができる。
私は2階の奥にある雅志の斎に入った。普段は「仕事の資料があるから勝に触るな」と固く禁じられている部だ。
然と並べられた本棚、デスクトップパソコン、な製のデスク。見すると、どこにでもある真面目なサラリーマンの斎に見える。
私は引きしを片っ端からけた。領収、会社の決算資料、古い賀状……怪しいものは見当たらない。パソコンの源を入れてみたが、ログインパスワードがかかっており弾かれた。
(……どこだ? どこに隠している?)
ふと、デスクの最段の引きしに目をやった。奥を覗くと、型のスチール製耐庫が静かに鎮座していた。テンキー式の子ロックがついている。
指先がたくなる。
(暗証番号は……さっきのスマホと同じ?)
息を呑みながら、暗証番号を入力する。
『0—5—1—2』
義母の命。
ピピッ、とい子音が鳴り、カチャリと解錠の緑のライトが点灯した。
「……ッ」
自分の母親がんだを、犯罪の証拠を隠す庫の暗証番号にしている。
その歪んだ神経に吐き気がした。
扉を引くと、には分い茶封筒が何通かと、USBメモリ、そして黒いバインダーが冊入っていた。