"毎週木曜、つながらない番号へ" 第5話
312の番から桐への接続票も、そのにあった。
午839分、申込み。
午840分、接続。
午841分、切断。
そして担当交換の欄には、田島志津の印があった。
美代子はを持ったまま、いその名を見つめた。志津が「聞いてしまった」と言っていたが、ようやくはっきりした。最の話をつないだのは、志津本だったのだ。
そのの遅番が終わった、美代子は更で志津を待った。誰もいなくなったことを確認してから接続票を見せると、志津は驚かなかった。ただ、いつかこのが来ることをっていたように、ゆっくり子へ腰をろした。
「森田さんの族に会ったのね」
美代子が返事をすると、志津はく息を吐いた。
「あの晩のこと、半ずっと忘れられなかった」
志津によれば、312の午840分、番から桐への距話を申し込んできたのは若い女だった。名は尋ねなかったが、毎週同じに同じ相へつなぐ声だったため、志津も覚えていた。普段なら接続したは別の回線へ注を移すが、その夜は切断を示すランプが異常な点き方をしたため、回線状態を確認しようとして再びを当てたという。
その、女の声が聞こえた。
「お母ちゃん、私、辞めたことにされてる」
志津はその言葉を聞いた。
続いて何かがくような音がし、くから男の声がした。
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内容までははっきりしなかったが、「誰に話してる」と鳴るような響きだったという。
「それから子か何かが倒れるようなきな音がして、回線が切れた」
志津は両を膝ので握った。
「すぐに番を呼びしたけど、誰もなかった。5分にも試した。でも駄目だった」
美代子は胸が苦しくなった。
「どうして、誰にも言わなかったんですか」
志津は顔をげなかった。
「翌朝、局に呼ばれたの」
当、亜繊維は楢沢町で最もきな事業所だった。が閉鎖されれば町の商や運送会社にも響がると噂されており、経営状態が悪化していることは誰もがっていた。それでも町役や力者たちは、最まで再建の能性をにしていた。
313の朝、話局は志津に「昨夜の番について余計な話をするな」と告げた。交換が通話内容をすることは規則違反であり、万聞こえたとしても、それをに話せば自分の責任になるとを押されたという。さらに昼にはの総務課が話局へ来て、番はに廃止するので回線に異常がないか確認したいと申していた。
「私、怖くなったのよ」
志津は初めて美代子を見た。
「何か変だとはった。でも私はただの交換で、聞いてはいけないものを聞いたのかもしれないとった。
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警察へっても、どうしてその話をっているんだと聞かれたら、自分の仕事を失うんじゃないかって」
責めることはできなかった。
現でさえ話のを勝に聞いたと疑われれば問題になる。ましてさな町で、きなと話局が同じことを言っている状況で、32歳の交換が声をげるのは簡単ではなかった。
「でもね、美代ちゃん」
志津は続けた。
「もっとおかしいことがあるの」
最の通話が切れてから40分ほど、志津は別の距話も扱っていたという。午920分、今度は女子寄宿舎ではなく亜繊維の事務所から、隣県にある番号への接続依頼があった。
相の名は覚えていない。
ただ、男は話でこう言った。
「医者につないでくれ。急いでる」
美代子はちがり、保されている接続票を確認しようとした。しかし翌、312夜の亜繊維事務所からの距接続票を探しても、その枚だけが見つからなかった。
の記録は残っている。
そこだけが、きれいに抜けていた。
曜の午、修は美代子と志津を町れの亜繊維跡へ案内した。の正には錆びた鎖が巻かれ、きな建物の窓には板が打ちつけられていたが、女子寄宿舎だけは理会社の許を得ればへ入ることができた。修は夜勤表を警察にも持ち込んでおり、その調査の環として建物を確認することになったのだった。