"毎週木曜、つながらない番号へ" 第3話
そして11最初の曜が来た。
午839分、美代子は交換台の計を見ていた。はっていなかったが、からたいが吹きろしており、話局の窓ガラスが折さく鳴った。やがて針が8を指した瞬、駅の回線ランプが点いた。
美代子はいつもの女だとい、受話器を取った。
「はい、交換です」
返ってきたのは男の声だった。
若い男だったが、ひどく疲れているように聞こえた。
「番をお願いします」
美代子のが止まった。
「申し訳ありません。番は現――」
「っています」
男は美代子の言葉を遮った。
「もう使われていないことはっています」
美代子は黙った。男の呼吸音だけが受話器から聞こえ、駅のが話ボックスを揺らしているらしい音まで伝わってきた。
「毎週このに、母がここから話しているでしょう」
美代子の背筋が伸びた。
交換が利用状況を答えてよいのか迷い、すぐには返事ができなかった。すると男は、それ以問い詰めるような言い方をせず、しを置いてからい声で続けた。
「妹を探しているんです」
その言で、から続いていた記録が本につながったようにじられた。
男の名は森田修といった。桐の森田清作の男で、現は県庁所の物に勤めているという。毎週曜に赤話へ来ていた女は、修の母、森田澄だった。
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「妹さんは亜繊維にいたんですか」
美代子がわず尋ねると、修はしばらく黙った。話の向こうで貨を入れ直す音がし、その、覚悟を決めたように答えた。
「森田千鶴。18歳でした。からあそこの寄宿舎にいました」
美代子は名を胸ので繰り返した。
森田千鶴。
「からは、311に自分から辞めて町をたと聞かされました。でもには帰っていません。半以たっても、度もが来ないんです」
「警察には」
「きました。だけど18歳ですし、は退職願まで見せました。本のでてった能性がいと言われて、それ以は……」
修の声にはりよりも、い何度も同じ説をしてきたの疲れが滲んでいた。
美代子は交換台の横に置いてある312の記録をいした。もし記録が正しければ、森田千鶴が話をしていたと断定はできないものの、なくとも「311に辞めて寄宿舎をた」という説とはずれている。番からは、その翌の夜にも桐へ話がかけられていたのだ。
「お母さんは、どうして毎週ここへ」
美代子が尋ねると、修は答えた。
「千鶴は毎週曜の840分に、必ずへ話していたんです。で話を使わせてもらえるが決まっていました。だから母は、千鶴がまだどこかにいるなら、このだけはあの番号につながるんじゃないかとってる」
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理な期待ではないことくらい、澄自も分かっているのだろう。それでも半、度も欠かさず駅へ来ている。それは番号を呼んでいるというより、娘が最まで守っていた約束のを放せずにいるように美代子にはえた。
修は最に言った。
「今、母は話をしません。代わりに俺が来ました。母のところに、変なものが届いたんです」
「変なもの?」
「の寄宿舎で使われていた夜勤者名簿です」
美代子が何も言えずにいると、修はく続けた。
「312の欄に、妹の名があります」
そしてその夜、美代子は初めて、午840分の駅へ向かうことになった。
勤務を終えた美代子が駅へ着いた、計は午835分を過ぎていた。昼なら学や買い物客でにぎわう駅も、夜になると別の町のように静かになり、赤話のボックスだけが灯ので目っていた。ボックスの横には、濃い茶の套を着た柄な女と、背のい若い男がっていた。
男の方が美代子に気づき、軽くをげた。話で話した森田修だとすぐに分かった。女は澄で、50歳をし過ぎたくらいに見えたが、い皺と髪のために実際より老けて見えた。
「話局の方ですか」
澄はそうに尋ねた。
美代子は勤務に得た報を勝に話すことへのためらいがあった。
それでも修から見せたいものがあると言われ、駅まで来てしまった以、何も聞かずに帰る気にはなれなかった。