"毎週木曜、つながらない番号へ" 第2話
いつも穏やかな先輩の表が、そのだけ妙にく見えた。
「美代ちゃん」
「はい」
「番のことは、あまり聞かない方がいいよ」
「どうしてですか」
「昔の番号なんだから、それでいいの」
志津はそれ以説しなかった。
その夜、仕事を終えて話局をると、美代子はたいので駅の方を見た。灯のに赤い話ボックスがあり、その横をコート姿の々がに通り過ぎていく。先ほど話をかけてきた女がどのだったのか、美代子には分からなかった。
それでも志津の言葉がかられなかった。
聞かない方がいい。
ただ使われなくなっただけの番号なら、先輩があんな顔をする理由などない。
翌の昼休み、美代子は話局の奥に保管されている古い接続記録をいた。廃止された番号について調べること自体は禁止されていなかったし、番号変更の問いわせに備えて過の加入者を確認することもあった。そこで美代子は、番の記録をまで遡ってみた。
番。
亜繊維株式会社楢沢女子寄宿舎。
廃止は昭343末。
その記録を見ているうちに、美代子は奇妙な規則性に気づいた。
が閉鎖される以、毎週曜の午840分になると、番から必ず件だけ距話がかけられていた。相は楢沢町からをつ越えた桐の同じ番号で、通話はいつも2分から3分ほどしかなかった。
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25。
212。
219。
226。
35。
そして、312。
最の記録だけは、通話が1分にも満たなかった。
接続票には、途で回線が切れたことを示すいき込みが残されていた。美代子はその文字を読み、もう度付を確認した。
昭34312、曜。
その翌週、319からだった。
今度は反対に、駅の赤話から番を呼びす話が始まっていた。
美代子はそのの仕事、何度も接続記録のことを考えていた。偶然だと片づけるにはが致しすぎており、以番から桐へ話をしていた物と、現番を呼びしている女のには何か関係があるようにえた。だが話局には通信の秘密があり、交換が利用者の事へむやみにち入ることは許されない。
それでも美代子が気になったのは、最の話だけ途で切れていたことだった。番から毎週決まったに話をかけていた物が、312を境に突然いなくなり、その1週から誰かが逆に番を呼び続けている。まるで、片方から届いていた声が突然途絶え、残されたが同じ所へ向かって声を投げ返しているようだった。
昼休み、美代子は加入者台帳から桐側の番号を確認した。名義は森田清作となっており、所は桐奥ノ沢、職業欄には「農業」
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と記されていた。そのが現も話を持っているのかは分からなかったが、なくともまでは亜繊維の寄宿舎から何度も話がつながっていた。
その晩、美代子は志津とで遅番になった。客からの話が途切れたわずかなを選び、美代子はもう度だけ番について尋ねた。志津は最初こそ聞こえなかったふりをしていたが、美代子が312の記録を見たことを伝えると、膝のに置いていたを静かに握った。
「その記録、どこまで見たの」
「312の通話が途で切れていました。その次の週から、駅の赤話から呼びしが始まっています」
志津は答えなかった。交換台のランプがつ点いたため、いつもの声で応対し、旅館へ回線をつないだ。その処理が終わってからも、しばらくこちらを見ようとしなかった。
「美代ちゃん、交換が話のを詮索しちゃいけないって、教わったでしょう」
「分かっています。でも田島さんは、何かっているんですよね」
「っているんじゃない。聞いてしまっただけ」
美代子は息を止めた。
志津はそれ以話さなかった。誰かが廊を通る音がすると、すぐに姿勢を戻して仕事へ集したため、美代子も追及できなかった。しかし「聞いてしまった」という言葉によって、番への疑問はむしろきくなってしまった。