"鍵をかけられた妊婦" 第3話
美緒は訂正しようと文章を打ち、消した。誰かに分かってもらうたび、次のへ事を説し続ける活が始まりそうだった。
夕には、美緒が医師から避けるよう言われているものが並んだ。別の料理を作ろうとすると、節子は「神経質な母親の子ほどくなる」と言った。邦夫はテレビを見たまま、「まあ、べられる物をべればいい」と呟いたが、節子へは何も言わなかった。
美緒はいご飯と噌汁だけをべた。腹ので子どもがき、そのさなきだけが、自分の覚を信じていいと教えてくれているようだった。
翌朝、は帰宅すると、美緒を所のファミリーレストランへ連れした。節子のでは話しにくいと言い、窓際の席でコーヒーを何度もかき混ぜた。
「祭りの注文があることはってた。でも、美緒を働かせるために帰ったわけじゃない。母さんがし伝ってもらえたら助かると言っただけだ」
「私の名入りの勤務表がある。どうして週の付までかれてるの?」
は答えず、スマートフォンの画面を伏せた。美緒が問い直すと、やっと漏事の終も産まで実にいる話を、節子と相談していたと認めた。
「初めての産だし、その方がだとった。産もかくらい、母さんに助けてもらえばいい」
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「私には度も相談してない」
「言ったら、気を遣って断るだろ」
「断る権利があるでしょう」
はため息をついた。「何でも権利とか言うなよ。俺だって夜勤を断れなくて限界なんだ。実のもがりない。みんなしずつすれば済む話だろ」
美緒は、その『みんな』のが同じ量ではないことを伝えた。は夜勤をするが会社から料がる。節子と邦夫は自分たちのを守る。美緒だけが本業を遅らせ、妊娠の体を使い、相談もなく産まで予定を決められている。
は黙った。正論が通じた沈黙ではなく、これ以話したくないの沈黙だった。
をる、美緒はウィークリーマンションへ移ると告げた。費用は自分の貯からし、事が終われば自宅へ戻る。が緒に来るかは、自分で決めればいいと言った。
「今たら、母さんの顔を潰す」
「私の体より顔が事なの?」
「そういう言い方をするなよ」
へ戻ると、節子は何も聞かなかった。作業台には美緒の分のエプロンがなかったので、話が伝わっているのだとった。
午、美緒は会社へ事を話し、翌を休みにした。自分でタクシーを呼び、最限の荷物を持ってるつもりだった。
翌朝、玄関へくと、靴がなかった。美緒のスニーカーもパンプスも、駄箱から消えている。
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「を洗うから、庫へ移したの」
節子は菜を切りながら言った。庫の鍵を求めると、「邦夫さんが持ってた」と答えた。
美緒は裸でもようと玄関の引き戸にをかけた。戸はかなかった。内側のつまみ錠とは別に、側から棒を差し込む古い補助錠が掛かっている。
「けてください」
「今朝、裏に審なが止まってたの。あなたでしたら、に叱られる」
「タクシーを呼んでいます」
「断っておいたわ」
美緒はスマートフォンを確認した。配アプリにはキャンセルの通があり、その直に自分の端末から運転へメッセージが送られている。充、節子が触ったのだ。
「これは配じゃありません。閉じ込めてるんです」
節子は包丁を置いた。「げさね。お父さんが昼に戻るまで、にいてと言ってるだけでしょう。あなたは今、になってる。そんな状態でで歩かせられないわ」
美緒はへ話した。回目でつながり、事を話すと、夫はい声で言った。
「母さんは、美緒が急にていくと言うから配しただけだ。昼まで待てないのか」
「鍵をけるよう言って」
「今、仕事なんだよ。のにいるなら危険じゃないだろ」
「私がたいのに、られないことが危険なの」
「妊婦がでホテルへく方が危ない。今夜帰って話すから」
話は切れた。
その、美緒の腹がくなった。昨までとは違う、背まで締めつけるような痛みだった。度収まり、分ほどしてまた始まった。