"鍵をかけられた妊婦" 第1話
「妊婦は病じゃないのよ。座ってばかりいたら、かえって難産になるわ」
義母の節子はそう言って、キロ入りの菜箱を美緒の元へ置いた。妊娠週に入ったばかりの腹が作業台につかえ、美緒は包丁を持つを止めた。
埼玉県部の古い軒で、玄関脇のは漬物の作業になっていた。義父の邦夫が始めたさな「川漬物」は、の駅と軒のへ商品を卸している。美緒と夫のがここへ来たのは、週だけのはずだった。
んでいた賃貸マンションで階から漏し、寝の井と壁を張り替えることになった。事の仮まいを探していた、節子が「ホテル代なんてもったいない。赤ちゃんがまれるに、族で暮らす練習にもなる」と申したのである。
は物流会社の配担当で、そのから夜勤務に入っていた。実なら昼も母親がいる。美緒をにせずに済むとし、会社へい実から通うことを決めた。
最初のは、本当に親切だった。節子はの噌汁を作り、階段では美緒の肘を支え、夜になると湯たんぽを持ってきた。
目、節子は朝にエプロンを差しした。「し伝ってくれる? 袋へラベルを貼るだけ」と言われ、美緒はだけ作業した。
目には根の皮をむいた。
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目には注文票と納品を照し、目には午から昼過ぎまで菜を切った。
美緒は妊娠、医療器会社で営業事務をしていた。つわりがく、医師から通勤をくするよう助言されたため、現は宅勤務に切り替えている。午から午までは、自分の仕事がある。
「から会議なので、今はここまでにします」
そう告げると、節子は壁の計を見た。「あと袋よ。族の仕事より会社の会議が切なの?」
族の仕事。その言葉に、美緒は包丁を置けなかった。
川へ泊めてもらっている負い目があった。費を渡そうとしても節子は受け取らず、「そんなみたいなことをしないで」と笑う。その代わりとして数伝うくらいなら仕方ない、と美緒は自分へ言い聞かせた。
昼休み、会社の司へ会議の遅刻を謝った。画面越しに顔を配されたが、美緒は「朝、しの用事がありまして」とだけ答えた。
夕方、が起きてきた。夜勤へるの夫に作業のことを話すと、彼は靴を履きながら笑った。
「母さん、張り切ってるんだよ。美緒と緒に何かしたかったんじゃない?」
「毎朝は、しじゃないよ。仕事にも遅れた」
「嫌なら断ればいいだろ。母さんは言い方がいだけで、無理やりやらせるじゃない」
美緒は、断ったあとの節子の顔をいした。
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元は笑っていても、卓から美緒の箸だけがていなかったり、洗濯物のから美緒のだけが残されていたりする。偶然と言われれば、それまでのさなことだった。
「あなたから言ってくれない?」
「今、繁忙期なんだ。でまで板挟みにしないでくれよ」
は美緒の腹へを当て、「お父さん、働いてくるからな」と話しかけた。その優しい声の直に玄関が閉まった。
翌朝、作業台には菜が箱積まれていた。節子は当然のようにゴム袋を置き、「今は百袋だから、く始めましょう」と言った。
美緒は初めて、泊めてもらっているのではなく、働かせるために呼ばれたのではないかとった。
そのの夕で、邦夫は商品の評判がいいと嬉しそうに話した。美緒が貼ったラベルは曲がらず、会社勤めのは際が違うと褒めたが、何働いたかは尋ねなかった。美緒は褒め言葉のにも、次の作業を断りにくくする力があるとじた。
週、美緒は定期健診の準備をしていた。バッグへ母子帳を入れようとすると、いつもの引きしに見当たらない。
「母子帳なら、私が預かってるわよ」
節子は台所の戸棚から透なケースをした。母子帳だけでなく、健康保険証と診察券も緒に入っている。
「どうして勝に?」
「昨、作業の子にバッグを置きっぱなしだったでしょう。
汚れたら困るから移したの。切な物はか所で管理した方がいいわ」