"果樹園の奥の家" 第8話
「控えは残っていないのか」と私が聞くと、野さんは古い帳を撫でた。「正式な配番号はありません。ただ、先代社の頃からの担当者と、過の運送会社なら全部いてあります」
細い糸でも、まだ切れてはいない。私は従業員たちへ通常どおり選果を続けるよう指示し、野さんには過3分の送り状を集めてもらった。
「き先を返して。これは夫婦喧嘩ではなく、従業員18の活に関わることよ」
「だったら、解任を撤回しろ。会社を俺に譲る契約が正しいと認めれば教えてやる」
健太郎は従業員ので条件を言い切った。会社を守るためではなく、質にした事実を、自分ので認めたのだ。
私は携帯の録音表示を確認し、野さんと目をわせた。彼はさくうなずき、古い作業帳を胸ポケットから取りした。
健太郎はそれに気づかず、勝ち誇ったように笑った。
「あと48だ。俺なしで、38トンのりんごをどこへ運べるか見せてもらおう」
第9話 48の荷
健太郎が事務所をた瞬、残りを示す数字が壁の計よりくのしかかった。
倉庫には38トン、午にはさらに8トンが入る。との契約も配番号も消され、48以内にかせなければ違約だけでなく、梨果の信用まで失う。
「先代なら、取引先を1社に任せきりにはしなかった」
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野さんは古い作業帳をいた。に焼けたページには、担当者や運送会社の名が、父の几帳面な字と野さんの追記で20以分残されている。正式な契約ではないが、へつながる入にはなる。
私は従業員18を3班に分けた。1班は過3分の送り状と請求を倉庫から探し、1班は荷できる品質ごとにりんごを再選別する。残る1班には蔵庫の容量を空けるため、傷のある実を加業者向けに分けてもらった。
「今は解雇も減もしません。残業になった分は、分単位で記録してください。必ず支払います」
げだった若い従業員が、初めてまっすぐ私を見た。
最初の4は、断られ続けた。健太郎がすでに「経営権争いで荷能になった」と連絡しており、運送会社は巻き込まれるのを恐れている。担当者からも、代表者が誰か確定するまで荷を受け取れないと言われた。
私は鳴らず、変更登記の受付票、100%株主の決議、品質検査表、支払い保証を1件ずつ送った。野さんは隣で、父と取引した当のことを話の相へ語った。
午312分、松本の運送会社から最初の返事が来た。
『先代には、でち往したとき助けてもらいました。型2台なら今夜回せます』
その1本をきっかけに、止まっていた流れがき始めた。過の送り状から配番号が7件見つかり、野と群馬のが受け入れを表する。
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夜通しで選果を回し、荷始から14、最初の12トンを積んだトラックがをりた。
夜の選果では、ベルトコンベアの音と箱を組む音が途切れなかった。私は事務所と倉庫を往復し、受け入れ先ごとに糖度、等級、箱数を照した。父の横で帳簿をつけた経験が、初めて現の速度に追いついていく。従業員から「社」と呼ばれても、私はそのたび「今は栞さんでいい」と答えた。必なのは肩ではなく、朝までを止めないことだった。
翌朝、健太郎から従業員へ「栞に従えば会社は潰れる」という斉メッセージが届いた。誰も返事をせず、野さんは画面を保して作業へ戻った。その静かな無が、どんな反論より夫を孤させていた。
残り3、最の両が故障し、積み切れない4トンが倉庫に残った。私は加業者へ直接話し、傷のない実も含めた買い取りを条件に型3台を配する。空がみ始めた午641分、最のコンテナが荷台へ収まった。
側には、到着した荷を受け取るたび写真と計量票を送ってもらった。38トンという数字をのだけで終わらせず、積載量と受領印で1台ずつ確定する。最の受領通が届いたとき、作業台へ突っ伏しかけた若い従業員の肩を、野さんが笑って叩いた。
始から4623分。38トンすべての荷が完した。
エンジン音がの向こうへ消えると、従業員たちからさな拍が起きた。