"水曜日の部屋" 第2話
静かなき。
まるで、このの持ち主のように自然に鍵をけている。
美奈は息を止めた。
らない顔だった。
女は靴を脱ぎ、迷うことなく梨の部へ向かった。
そしてドアをける。
部に入った女は、最初に何をしたとうか。
美奈は画面を見ながら、言葉を失った。
女は仏壇のように置かれた梨の写真のに座った。
そしてさくをげた。
「……今も、見つけられなかった」
その声は、泣いていなかった。
っているようでもなかった。
ただ、い疲れが滲んでいた。
女はちがると、ベッドのシーツをえた。
机の本を並べ直した。
カーテンの角度を直した。
最に、植物へを与えた。
そのきはあまりにも自然だった。
まるでずっと続けてきた習慣のようだった。
美奈の背にたいものがった。
この女は。
梨が消えたあとも。
ずっとこの部に来ていた。
では。
なぜ?
なぜ自分ではなく、この女が?
なぜ母親である自分がらない娘の何かを、このはっているのか。
画面ので、女は帰るに度だけ振り返った。
誰もいない部に向かって、静かに言った。
「梨さん。
もうです」
美奈の指先が震えた。
その瞬。
彼女は初めて気づいた。
自分が探していたのは、消えた娘の方だけではなかった。
自分のらない娘のだったのだ。
広告
翌朝。
森川美奈は、ほとんど眠れないままのシャッターをけた。
いつもの朝だった。
をるの音。
所のパンから漂う焼きたてのり。
通勤するたちの音。
何も変わっていない。
なのに、美奈だけが昨までとは違う世界にいるような覚だった。
のに、あの映像が何度も蘇る。
午分。
黒いコートの女。
梨の部に入り、迷うことなくく姿。
そして最の言葉。
――もうです。
あの女は、梨が帰ってこないことをっていた。
っているだけではない。
、待っていた。
美奈はのを替えながら、何度もスマートフォンを見た。
警察に連絡するべきだろうか。
それとも、直接あの女に聞くべきなのか。
だが、どちらを選んでもつだけ確かなことがあった。
あの女は、梨をっている。
自分よりも。
その事実が、美奈の胸を締め付けていた。
午。
にの客が入ってきた。
代半ばくらいの女性だった。
淡いのコート。
疲れたような目。
でも、その顔を見た瞬、美奈の体が固まった。
昨、画面越しに見た顔だった。
「……森川さん、ですよね」
女は静かに言った。
美奈は答えなかった。
代わりに、レジの横に置いていたスマートフォンを握りしめた。
「あなた……」
声が震えた。
「どうして、娘の部に入っていたんですか」
女の表がわずかに変わった。
広告
驚いた様子ではなかった。
まるで、いつかこのが来ることを分かっていたようだった。
「カメラを付けたんですね」
「質問に答えてください」
美奈の声は、自分でも驚くほどたかった。
「あなたは誰ですか」
数秒の沈黙。
のを自転が通り過ぎる音が聞こえた。
女はさく息を吐いた。
「野寺千です」
「梨とは、どういう関係ですか」
千はすぐには答えなかった。
そのが、美奈には苦しかった。
友なのか。
恋なのか。
会社関係なのか。
どんな答えでも、自分のらない娘のがてくる気がした。
「私は……梨さんに助けてもらったです」
予していた答えとは違った。
「助けてもらった?」
「はい」
千は線を落とした。
「でも、同に……私は梨さんを許していません」
その言葉に、美奈の眉がいた。
「許していない?」
千は黙った。
美奈は歩づいた。
「あなたは、娘の部に勝に入っていたんですよね」
「はい」
「なのに、娘を許していない?」
「はい」
「どういうですか」
千はゆっくり顔をげた。
「森川さん」
「はい」
「梨さんは、あなたに何と言ってをましたか」
美奈の呼吸が止まった。
その質問は、胸の奥に刺さった。
「……しだけ、自分のためにがほしいと」
「そうですか」
千は目を伏せた。
「やっぱり、そう言ったんですね」
「何をっているんですか」
美奈の声がくなる。
「娘はどこにいるんですか」
千は答えなかった。
その沈黙が、逆に答えのようだった。
「っているんですね」
「……」
「あなたは梨の居所をっている」