"財産は長男へ――8年間介護した次男に残されたのは、古びた倉庫一軒だけだった" 第3話
正面の真鍮板には《武田精密》の古いロゴが刻まれ、鍵穴はなく、丸いダイヤルだけが付いている。父の誕やの創業を試しても、取っはかなかった。
浩司は作業着のポケットに入れた腕計を取りした。裏蓋の《武田精密》という刻印の脇には、傷に見える細い溝がある。さな具を差し込み、慎にひねると、蓋が乾いた音をててれた。
内部の歯は錆びず、父が最まで入れしていたことが分かる。そして裏蓋の内側には、針のようなもので彫った文字があった。
〈に4 に20〉
文字のには、さな丸がに3つ、に2つ並んでいる。
「庫の番号だ」
千恵が息をのんだ。420分は、18に千恵がまれた刻でもある。父は病院へ仕事着のまま駆けつけ、腕計を見ながら「この子がうちへ来ただ。忘れるな」と笑っていた。
浩司はダイヤルをへ3回転させ、4で止めた。次にへ2回転させ、20へわせる。
最の数字が基準線へなると、庫の奥でい属が落ちた。
がちゃん。
取っがき、い扉が数センチいた。と属がいを過ごした匂いが、狭い隙から流れす。
「ここから先は、野先にち会ってもらおう」
浩司はすぐに野弁護士へ話をかけたが、留守番話につながった。発見刻、3の氏名、隠し部と庫の状態を伝え、撮が度も途切れていないことも録音に残した。
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完全に閉めれば、古い錠が再びかなくなるかもしれない。浩司は苗の撮を確認しながら、扉をの腕が入らない程度だけいた。
懐灯のを差し込むと、段には父の字で〈浩司へ〉とかれた封筒と、何冊もの帳簿が並んでいた。そして段には、錆びた具でも古い械部品でもないものが、隙なく積まれている。
同じきさに鋳造された、黄い属の列だった。
第5話 庫のの486本
野修から折り返しがあったのは、留守番話へ伝言を残してから7分だった。
「扉をしけただけで、の物には触れていませんね」
「はい。発見してからの画も、途切れずに残っています」
「そのまま倉庫にいてください。今から向かいます」
約1、野は事務員とともに到着した。倉庫へ入るに全員の氏名と刻を記録し、公正証遺言の写しを確認すると、該当する節を浩司たちに示した。
〈旧武田精密倉庫、その敷及び建物内にする産切を、次男・武田浩司に相続させる〉
庫が以からこの倉庫にあり、父・正の所物だったと確認できれば、も原則として浩司が相続した財産になる。ただし、価値の分からない物を勝に持ちせば、から隠匿を疑われかねない。野は苗の画を最初から見直し、庫の周囲を撮してから封印用テープへ署名した。
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「ここまでの記録は分です。私のち会いで、の1本だけ確認しましょう」
浩司が扉をけると、黄い属が懐灯のを鈍く返した。野はい袋をはめ、透な保護袋に包まれた1本を両で作業台へ移す。表面には精錬会社の印と製造番号、さらに〈FINE GOLD 999.9〉〈1000g〉という刻印があった。
「刻印どおりなら、純1キロです」
苗が元を押さえ、千恵は奥まで続く属の列を見つめた。段には帳簿と耐袋が収められ、〈取得記録・申告関係〉とかれた袋には、購入、量、製造番号、購入証、税務類が1本ごとに理されていた。最も古い記録は30以で、最は正が倒れるの付だった。
翌朝、警備員がち会う、会社で30以検査を担当した鑑定士と税理士が庫をいた。は番号順に取りされ、量、刻印、観を記録したうえで、部を蛍X線分析と比検査にかける。袋の番号も、父が残した購入証とすべて致した。
朝から始まった作業は夕方まで続いた。最の1本を確認した鑑定士は、覧表へ署名してから浩司へ向き直った。
「総量486キロ。すべて純度99.99パーセントのと判断します」
税理士は正がくなったの公表価格を使い、相続税評価のための概算をした。野から渡された計算には、〈101億1852万円〉と記されていた。
入学続の期限、浩司たちは82万円を用できず、千恵は学への入学を辞退した。