みかん小説
本棚

"父が守った秘密" 第11話

もっと自由にきられたかもしれない。

違う仕事。

違う所。

違う

でも。

母になって。

妻になって。

族を守る側になって。

いつのにか。

自分のを考えることをやめていた。

「お父さんは……」

私は聞いた。

「それを20、守っていたの?」

父は頷いた。

「最初の頃は違った」

「違った?」

「使うべきだとった」

だった。

「おと浩くんが喧嘩した

「おが泣いて帰ってきた

「何度もった」

『このを使ってでも、何とかしてやろう』

父は拳を握った。

「でもな」

「浩くんに言われた」

『あなたがまた美を決めたら、昔と同じになります』

「俺はおを守りたいとっていた」

父は通帳のを置いた。

「でも、本当は、おが傷つくのを見る自分が怖かっただけだった」

私は父の顔を見た。

昔なら、その言葉を聞いた瞬っていたとう。

結局、自分のためだったんじゃないか、と。

でも今は、そのどちらも本当なのだとえた。

父は私を守りたかった。

そして、その気持ちのせいで私のに踏み込んだ。

も同じだった。

私のためにを残そうとした。

父に預けた。

私が困ったのことまで考えていた。

けれど。

私は通帳を見ながら、ずっと胸のに残っていた言葉をにした。

「それでも」

父が顔をげる。

とも、最まで私に聞かなかったんだね」

父の表が止まった。

広告

「このおが欲しいかどうかも」

「将来、をやり直したいとうかどうかも」

「私が何を幸せだとうかも」

が静かになった。

父は何も言わなかった。

私は続けた。

「浩さんが私のことを考えていたのは分かった」

「お父さんが、これを使わずに守っていたことも」

「嬉しくないわけじゃない」

言葉を選んだ。

「でも、し腹がってる」

父がさく息を吐いた。

「ああ」

否定しなかった。

っていい」

その返事が、だった。

昔の父なら、きっと理由を説した。

俺たちはおのためにやった。

に方法がなかった。

そう言っただろう。

でも今は何もさなかった。

しばらくして、父は通帳を私の方へ押した。

「持っていけ」

私は通帳を見た。

積みなった数字。

悔。

父の悔。

が勝に私のためだと決めたもの。

そして同に。

私がらなかったところで、が私を気にかけていた証拠でもあった。

私はを伸ばしかけた。

でも、止めた。

「今は持って帰らない」

父が私を見る。

「そうか」

「うん」

「まだ、これをどうしたいのか分からないから」

父は度だけ頷いた。

「分かった」

それだけだった。

私はし笑った。

このは私に言った。

その男とは結婚するな。

今。

目のには、何も決めない父がいた。

それだけで分だった。

玄関で靴を履いている、父がろから呼んだ。

広告

「美

振り返る。

父は何か言おうとしていた。

けれど、結局。

「気をつけて帰れ」

と言った。

「うん」

私はた。

帰りので、真央から話が来た。

「お母さん、今丈夫?」

丈夫よ。どうしたの?」

し沈黙があった。

「健さんと話した」

私は窓のを見た。

夕方のが流れている。

「そう」

「仕事のことも話した」

「うん」

「私が辞めたくないって言ったら、最初は納得してなかった」

真央はさく笑った。

「でも、もう回ちゃんと話したいって」

私は何も言わなかった。

「お母さん」

「何?」

「私、どうしたらいいとう?」

の私なら。

たぶん、すぐに答えていた。

そんなとは結婚しない方がいい。

仕事は絶対に辞めない方がいい。

あとで悔する。

全部。

娘を配して言う言葉だったとう。

だからこそ。

私はし考えてから聞いた。

「真央は、どうしたいの?」

話の向こうが静かになった。

「……まだ分からない」

「そう」

「それでもいい?」

「いいんじゃない?」

自分でも驚くほど、自然に言えた。

「分からないなら、分かるまで考えればいいよ」

「お母さんは?」

「私は決めない」

真央が黙った。

「健さんと結婚するのも」

「やめるのも」

「仕事を続けるのも」

「全部、真央が決めて」

しばらくして。

娘がさく笑った。

「おじいちゃんだったら、絶対何か言いそうなのに」

私も笑った。

「昔ならね」

話を切った

私は窓に映る自分の顔を見た。

何かを許したわけではなかった。

父がしたことも。

がしなかったことも。

消えたわけではない。

らされなかったことを、これから先もすとう。

それでも。

全部をつの答えにする必はないのかもしれない。

されていた。

傷つけられた。

どちらも本当だった。

父からいメッセージが届いた。

《通帳はそのまま置いてある》

私は画面を見て、し考えた。

そして返した。

《分かった》

送信してから、もう度文字を打った。

《今度、真央も誘ってご飯べようか》

返事はすぐには来なかった。

分ほどして。

《分かった》

父らしい文字だった。

私はスマートフォンを伏せた。

机の引きしには、浩の送記録がある。

でも、そのかなかった。

分からないことが、全部なくなったわけではない。

もう聞けないこともある。

それでも今は。

誰かが私のために決めた答えではなく。

自分で考えるがある。

それでよかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: