"山奥に捨てられた下半身不随の妻妻は立ち上がる" 第2話
「どれだけがかかっても構いません。妻をもう度歩かせてください」
健は医師へくをげた。
その献な姿は病棟でも評判になった。しかし佳奈には、どうしても引っかかることがあった。
事故の連絡を受けてから20分もたたないうちに、健は現へ到着していた。夫のいた本社から現までは、でも30分以かかる。
数、会社の経理責任者である林が病を訪ねた。
「社、会社印と法座について確認したいことがあります」
林が類を取りそうとすると、健がへ入った。
「今は仕事の話をする状態じゃない。経営のことは俺が対応する」
「ですが、佳奈社ご本の承認が必です」
「妻に負担をかけるな」
健の声は穏やかだったが、林を病からすまで度も笑わなかった。
その翌、佳奈は健が勧めるリハビリ病院へ転院した。移、夫は貴品をまとめながら、通帳と印鑑は自分が預かると言った。
「病院へ置いておく方が危ない。おは治すことだけ考えろ」
薬が切れ始めた夜、佳奈はベッド脇のバッグを確かめた。財布とスマートフォンは入っているが、会社の庫に使うカードキーがない。
黒い革の印鑑ケースも消えていた。
に入っていたのは印ではない。座の商業ビルを含む佳奈個の資産をかすための、実印だった。
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第3話 眠っている妻の実印
転院、佳奈にはい鎮痛薬と眠導入剤が処方された。薬をむと識がく沈み、目をけていても翌朝には記憶が曖昧になった。
健は毎見いに来た。護師のではをませ、髪をえ、帰り際には「も来る」と優しく声を掛ける。
だが夜1を過ぎると、別の顔を見せた。
佳奈が眠っているとった健は、紺の類かばんをき、ベッド脇の台へ数枚の類を並べた。を持ちげて朱肉のへ親指を押しつけ、類の指定箇所へ指紋を残す。そのあと、黒い革ケースから実印を取りした。
佳奈はいまぶたの隙から、そのきを見ていた。
声をそうとしても舌がかない。健は度も妻の顔を確認せず、慣れたつきで印を押していった。
翌朝、佳奈は巡回に来た医師へ頼んだ。
「昨夜のことを、覚えていたいんです。薬を調できませんか」
医師は痛みの程度を確かめ、段階に量を減らすことに同した。健にはらせないでほしいと頼むと、理由を尋ねられた。
「夫が、眠っている私の指と実印を使っています」
医師の表が変わった。
そのの午、リハビリテーション科の浦真紀医師が病へ来た。にしていたのは、佳奈名義で提された治療拒否申だった。
面には、今の積極なリハビリを望まず、夫の判断に任すると記されている。
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署名は滑らかで、震えも迷いもなかった。に力が入らない今の佳奈がける文字ではない。
さらに、佳奈が所する座の商業ビルについて、売却交渉を健へ委任する類も見つかった。実印の印は、どちらにも鮮に残っていた。
「これは、私がいたものではありません」
浦は原本を封筒へ戻した。
「ご主へ確認しますか」
佳奈は首を横に振った。問い詰めれば、健は証拠を消し、別の方法を選ぶ。今は彼が何を奪おうとしているのか、最まで見極めなければならない。
「類を保全してください。それから、私が治療を希望していることも記録に残してください」
「分かりました」
「もうつお願いします。識が戻っていることを、夫には伝えないでください」
浦が病をたあと、佳奈は掛け布団のでに識を集した。
何も起きないまま、数秒が過ぎる。
それでも諦めずに力を込めると、の親指がわずかに持ちがった。
夫が奪おうとした未来が、数ミリだけいた。
第4話 あののでは眠っている
佳奈のリハビリは、健が病院へ来るの朝7にわれることになった。
最初はの指をかすだけだった。10回試して1回反応すればよく、翌には再びかなくなることもある。それでも浦医師と理学療法士の佐藤美咲は急がせず、毎の変化を記録した。
2週、佳奈はベッドから子へ自力で移れるようになった。