"花嫁が僕を犯人にした朝" 第11話
と言うと、澄は作業と賃をへいた。
「お兄ちゃんが倒れたら、直せるも直せない。続けられる値段をもらうのも責任だよ」
僕は料表を作り、無料で引き受けるにも、その理由と件数を決めた。善を、相にも自分にも見えない形で使わないようにした。
ホテルでは、婚礼延期の相談窓が正式運用になった。瀬から聞いたところでは、で件の相談があり、そのうち件が延期、件が止になった。残りは予定どおり式を挙げたが、族と費用や姓の問題を話しう会になったという。
宮は今も婚礼部で働いている。耶も装に残り、主任補佐になった。の関係は仕事のものに限られ、親しくはない。それでも、顧客が装へ入るは必ず記録を残すという同じ規則を守っている。
制度ができても、はまた迷い、隠し、違えるだろう。だから制度は完璧なを作るためではなく、違いをへ押しつけず、途で止める所を増やすためにある。
の午、へ代の男性が古いモーニングコートを持ち込んだ。、自分の結婚式で着たを、今度は息子の結婚式で着たいという。
背の裏がきく裂け、内ポケットの周りには茶い染みがあった。
「全部きれいになりますか」
「裂けた部分は直せます。
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染みはくできますが、完全には消えないかもしれません」
男性は残そうにしたあと、染みの形を見て笑った。
「披宴で妻がワインをこぼしたんです。だったら、し残ってもいいかな」
僕は作業内容を緒に決め、預かり証へ記入した。何でも品へ戻すのではなく、そのが残したいを傷つけないことも修復だった。
男性が帰ったあと、郵便受けにい封筒が届いていた。差は奈緒。には結婚式の招待状ではなく、彼女が勤める会社のさな展示会案内が入っていた。
奈緒は仕事を続けながら、夜の学で飾雑貨を学び始めたらしい。展示作品の欄には、《切断線をかした布物》とかれている。
いが添えられていた。
《来てほしいというお願いではありません。あの教えていただいたことが、こういう形になったと伝えたくて送りました》
僕は程を確認したが、そのはに予約が入っていた。展示会へくために客の納期をかすことはしなかった。代わりに、《案内をありがとう。作品を完成させたことを嬉しくいます》とだけ返した。
僕と奈緒は友になったわけではない。彼女が僕につけた傷も、謝罪によって消えたわけではない。それでも、あのの来事だけで互いのが止まり続ける必はなかった。
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夕方、ホテル代の客が着の子ども用ドレスを持ってきた。娘の発表会用に通販で買ったが、裾がすぎるという。予約なしだったため、僕は翌週の受け取りになると説した。
「必なんです。し切るだけでいいので、何とかなりませんか」
母親は困った顔をした。以の僕なら、閉に残って引き受けただろう。断れば、この子が台にてなくなるような気がしてしまうからだ。
僕は予約表を確認した。今夜急いで縫えば、先に預かった客の仕事でミスがる能性がある。
「申し訳ありません。今はお受けできません。ただ、くで即対応をしているを軒っています。話で確認しましょうか」
母親は瞬落胆したが、の報を受け取って礼を言った。女の子も、さくをげた。
扉が閉まったあと、胸にわずかな罪悪が残った。しかし、誰かを助ける方法は、自分が全部引き受けることだけではない。
澄が奥から顔をした。
「断れたね」
「別のを探したから、半分だけ」
「最初は半分でいいんじゃない」
で作業台へ戻った。
預かったモーニングコートの裏をほどくと、古い仕ての印がてきた。縫い目は細かく、表からは度修復された跡が分からない。母とは違うつきだが、布を無理に引っ張らず、元の線を残そうとした仕事だった。
僕はしい裏をね、しつけ糸を通した。
布は、度切れたら元の枚には戻らない。どれほど丁寧に縫っても、裏側には継ぎ目が残る。