"花嫁が僕を犯人にした朝" 第9話
「全部、自分で決めていいんですか」
女性が尋ねた。
「はい。僕は、決めた形を作るお伝いをします」
直すが勝に正解を決めてはいけない。そのことを、僕は着のドレスを失ってから覚えた。
奈緒の母、美智子から連絡が来たのは、事件からかだった。
ホテルではなく、崎の事務所を通した面会希望だった。僕は断ってもよかったが、封筒を抜いた本が何を考えていたのか、度聞きたいとった。
美智子は以より痩せていた。経営していたエステサロンの舗計画は止になり、浦側から借りていた既の改装資は、返済条件を見直して払い続けているという。
「封筒を取ったのは私です」
彼女は座るとすぐ認めた。
婚礼の夜、奈緒の様子がおかしいことが気になり、ドレスへ縫い込んだものがあると察した。腰裏から封筒を見つけ、の類を読んだあと、隆之へ渡した。
「娘が結婚を壊そうとしているといました。浦先に類を見せれば、誤解を解いてくださると信じたんです」
「僕が疑われていることはっていましたか」
「っていました」
「それでも、封筒を抜いたことを言わなかった」
美智子は膝のでを握った。
「あのは、あなたの仕事より娘の結婚の方が切だといました」
言い訳を並べられるより、その言葉の方が残酷で、同に正直だった。
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「今は違うんですか」
「今も、娘の方が切です。でも、だからの活を壊していいことにはならないと、ようやく分かりました」
奈緒は圭介との婚調を申してていた。直接な暴力や貞があったわけではないため、圭介は婚を拒み、やり直したいと主張している。奈緒は、父の計画を止められなかったことより、自分が助けを求めたに圭介が世体を優先したことを問題にしていた。
美智子は当初、婚へ反対した。借の返済だけでなく、娘が歳を過ぎてになることも恐れていた。
「私は奈緒のためと言いながら、自分ができる結婚を守りたかったんだといます」
美智子は通の封筒を机へ置いた。僕が受けた処分と精神苦痛に対する解決を支払いたいという申しだった。
崎は、法に請求できる範囲と、解したの条項を説した。僕はを受け取ることへ抵抗があった。許しを売るようにじたからだ。
「解決は、許す代ではありません」
崎が言った。
「相の為でじた損失を、言葉だけで終わらせない方法のつです。受け取るかどうかは朝倉さんが決めてください」
僕は、自宅待に依頼を断った個の装修復費と、弁護士費用の部に相当する額だけを受け取ることにした。禁止の条項は、すでにSNSで広がった誤報の訂正を妨げない範囲へ限定した。
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「奈緒さんは、今どうしていますか」
面会の最に尋ねた。
「実には戻っていません。さな部を借りて、以の会社で働いています。私ともに度しか会いません」
「寂しいですか」
「寂しいです。でも、会ってくれる回数を増やすために、また何かを決めてしまったら同じですから」
美智子はちがり、をげた。
僕は許しますとは言わなかった。彼女も、それを求めなかった。
帰り、母が働いていた裁のを通った。はに閉まり、今はコインランドリーになっている。ガラス越しに回る洗濯物を見ながら、僕は母の言葉をいした。
直せるが直せば、そのは収まる。
母はきっと、僕にの教訓を残すつもりで言ったのではない。疲れたの、ただの独り言だったのかもしれない。僕がそれを正しいき方に仕て、い、自分へ課していただけだった。
収まったように見える所ので、誰かが破れ続けることがある。
直すべきなのは、いつも目のの布だけではなかった。
事件から、奈緒の婚が成した。
調ではできず、別居が続いたあと、圭介が婚へ応じた。浦の融資計画は奈緒の署名に撤回され、刑事事件にはならなかった。ドレスの損害は奈緒側がホテルへ弁償し、ホテルは保険請求を取りげた。
誰かが逮捕され、すべての真相が公表されるような結末ではない。