"「ただいま」と帰った亡き夫" 第4話
「でも……」
「見せてくれ」
信夫は仏壇のへ座った。
自分の名がかれた位牌をに取った。
い、何も言わなかった。
佐子はしれた所に座っていた。
「こんなものまで作らせたんだな」
責める声ではなかった。
「仕方なかったんよ」
佐子は俯いた。
「何待っても帰ってこんかった。きてるかんでるかも分からんかった」
「分かってる」
「私……」
その先を言おうとしたが、信夫が首を振った。
「謝るな」
佐子は顔をげた。
「俺がいなかったんだ」
「でも……」
「11だぞ」
信夫は位牌を元の所へ戻した。
「11も待てなんて、俺には言えん」
佐子は堪えていた涙を拭った。
それでも、信夫の言葉で楽になることはなかった。
誰かがってくれればよかった。
「俺の妻だったのに」と信夫が責めてくれれば、謝ることができた。
隆が「今さら戻ってくるな」と言えば、信夫を守ることもできた。
けれど2とも何も責めなかった。
翌朝。
佐子が台所へくと、信夫の布団は畳まれていた。
庭を見ると、信夫が1でっていた。
は止んでいた。
くなった庭の隅から、朝のいが差していた。
「寒いやろ」
佐子が声をかけると、信夫は振り返った。
「変なじだな」
「何が?」
信夫は町の墓がある方角を見た。
「自分の墓がある」
し笑って言った。
佐子は笑えなかった。
信夫は庭のを靴先で軽く崩した。
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「昨、位牌を見てったんだ。俺はここでは、もう度んだなんだな」
「そんな言い方せんといて」
「悪いじゃない」
信夫は静かに答えた。
「俺が帰ってくるまでに、がんだってことだ」
朝の、節子は学へく支度をした。
いつも通り隆へ「ってきます」と言い、それから信夫を見た。
何か言うべきか迷っているようだった。
信夫は笑った。
「ってらっしゃい」
節子はさくをげた。
「……ってきます」
その距は、まだ親子のものではなかった。
数もしないうちに、町へ噂が広がった。
「さんの旦、きて帰ったんだって」
「戦したんじゃなかったのか」
「今の旦はどうなるんだ?」
「佐子さん、どっちを選ぶんだろう」
井戸端でも商でも、々は同じ話をした。
佐子が買い物へれば、皆が瞬黙り、そので自然に別の話を始めた。
には直接聞く者もいた。
「佐子さん、変やなあ。どうするん?」
「どうするって?」
「ほら……旦さん」
佐子は答えなかった。
どうすればいいのか、本にも分からなかった。
親戚まで集まってきた。
佐子の兄は、信夫がきて戻った以、元の夫婦へ戻るのが筋ではないかと言った。
「最初の旦が帰ってきたんや。信夫さんは何も悪いことしてへん」
すると隆の姉がく言い返した。
「じゃあ隆はどうなるんです。
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7も夫婦として暮らして、子どもまでいるのに、今からていけ言うんですか」
「そうは言ってへん」
「同じことでしょう」
誰もが、自分の考える正しさをにした。
だが佐子には、どの正しさも刃物のようにじられた。
信夫はきて帰ろうとしただけだった。
隆は残された母子を守っただけだった。
自分も、11ただ待ち続けることができなかっただけだ。
誰も悪くない。
だからこそ、選ぶことが残酷だった。
最もきく揺れたのは、節子だった。
信夫が帰ってきて数、学へくと、すでに話は同級たちにも広がっていた。
「節子、本当のお父さん帰ってきたんやって?」
休み、1の女の子に聞かれた。
節子は返事に困った。
「んだって言ってなかった?」
「うん」
「じゃあ今のお父さんは?」
節子は黙った。
誰も悪気があったわけではない。
子どもたちは珍しい来事が気になっていただけだった。
けれど節子には、自分の族が急に誰かの見世物になったようにじられた。
その、学から帰ると、信夫が庭にいた。
節子の自転を逆さまにし、れかけた鎖を直している。
「何してるの?」
節子が尋ねると、信夫は顔をげた。
「鎖が緩んでたからな。このまま乗るとれるぞ」
「お父ちゃんが直してくれるからいい」
にしたで、節子は瞬だけ顔を曇らせた。
信夫のが止まった。
節子の言う「お父ちゃん」が自分ではないことくらい、分かっていた。
「そうか」
信夫は笑った。
「じゃあ、途までやっとく」