"遺産は腐った倉庫だけ" 第5話
期限まで、あと6しかなかった。
「千恵には、奨学が決まるまで待ってくれと話した」
苗がをめた。
「学は待ってくれないわ。期までに払えなければ、入学続きは取り消される」
浩司は財布をいた。
今受け取ったと、数枚の幣。座に残っているをわせても、82万円にはく届かない。
父のでは、裕が相続したの名義変更を終えている頃だった。
自分の元にあるのは、売るにもがかかる倉庫と、420分で止まった計だけだった。
浩司は納付を折らずに、元の位置へ戻した。
その、玄関ので千恵が鍵を回す音がした。
第5話 32の赤い丸
玄関の鍵が回ったのは、午11を過ぎてからだった。
「ただいま」
千恵はコンビニの制のに古いダウンを羽織り、音をてないように居へ入ってきた。だが、こたつのに置かれた納付を見ると、を止めた。
赤い丸で囲まれた期限は、32。
納付額、82万円。
浩司は納付のに座ったまま、何も言えなかった。苗も湯みに両を添え、めた茶を見つめていた。
千恵は2の顔を順に見て、先にさく笑った。
「見つかっちゃったか」
「千恵、これは――」
「丈夫。今、学に話したから」
浩司は顔をげた。
「何を話した」
「入学続きのこと。今は辞退しますって」
あまりに静かな声だった。
広告
「待て。期限はまだ6ある」
「6で82万円なんて無理だよ。お父さん、今だって腰が痛いのに、昼も夜も働いてるじゃない」
「子供がそんな配をするな」
「もう子供じゃないから配するの」
千恵はダウンを脱ぎ、納付を丁寧に2つ折りにした。りも涙も見せなかった。その落ち着きが、浩司にはいっそう苦しかった。
「理学療法士だけがじゃないよ。来また考える。おをためながら勉するから」
それは諦めたの言葉ではなかった。諦めたと悟られないように用した言葉だった。
浩司は翌朝、最寄りのへった。
教育ローンの窓で、職員は浩司の履歴と与細を何度も見比べた。介護のために会社を辞めた8は、審査のでは収入のない空でしかなかった。今の収入も雇いにい契約で、継続性を証できない。
「担保になる産はございますか」
浩司は瞬、父から相続した倉庫をい浮かべた。
だが、登記を移したばかりで、建物は放置されている。現調査と評価だけでもがかかり、融資の否以に32にはにわなかった。
「申し訳ありません」
職員がをげた。
浩司のほうが、もっとくをげた。
奨学の相談窓にも話した。追加募集はあったが、入学の期限を延ばせる制度ではなかった。昔の同僚にを借りようとして、番号を表示したところで切った。
広告
8も連絡を取っていない相に、いきなり82万円を頼む自分がけなかった。
倉庫を買い取れないか、産会社にも相談した。
若い担当者は航空写真と登記簿を見て、現へ同した。錆びたシャッター、割れた窓、敷の隅まで伸びた雑を撮し、首をかしげた。
「だけなら値はつきます。ただ、建物の解体と残置物の処分費が引かれます。隣との境界も確認が必です」
「6以内に代を受け取ることはできますか」
「それは無理です。買いが見つかっても、くて数かでしょう」
父からもらった唯の財産は、娘を6の教へ入れてやるにはならなかった。
最に、兄へメッセージを送った。
父の預ももも、裕が受け取った。貸してほしいとはかなかった。
〈千恵の入学が32までに必です。父さんの葬儀や介護でて替えた分の部だけでも、先に精算してもらえないでしょうか〉
既読がついたのは、送信から3分だった。
返信は1に来た。
〈相続は遺言どおり終わった。おには倉庫があるだろ。売ればいい〉
その直、美咲からも届いた。
〈学はの丈にった計画でお願いします。うちを当てにされても困ります〉
浩司は画面を伏せた。
父の着を替えた夜も、救急に付き添った朝も、兄夫婦は度も来なかった。そのに浩司がて替えたを、2は最初からしないものにしていた。
32。
浩司は朝から事現にった。