みかん小説
本棚

"27年目の再会" 第10話

「お母さんが仕事を辞めた本当の理由」

里奈は言った。

「私、ってる」

「私、ってる」

里奈の言葉が、直に残った。

「何をっている」

話の向こうで、里奈はしばらく黙った。

「お母さんが、本当は度だけ、ようとしたこと」

の表が変わった。

「いつだ」

「私がの頃」

「そんなこと……」

「お父さんはらなかったとう」

子に座った。

の里奈。

まだ族が緒に暮らしていた頃。

子はいつも穏やかだった。

なくとも。

にはそう見えていた。

「なぜ」

「なぜ母さんは何も言わなかった」

里奈は答えた。

「私が止めたから」

その言葉に。

は息を止めた。

里奈は話し始めた。

子が京の版社から、もう度仕事の誘いを受けたこと。

それを偶然ったこと。

そして。

母親が悩んでいたこと。

「お母さんね」

里奈は言った。

「初めて、自分のために何かしたいって言ったの」

は目を閉じた。

「でも私は」

里奈の声が震えた。

「怖かった」

「父さんも母さんもいなくなる気がして」

「だから言ったの」

「お母さんまでいなくなったら、私はどうすればいいのって」

話の向こうで。

さな息遣いが聞こえた。

「お母さんは、そのあと何も言わなかった」

は何も言えなかった。

その夜。

は美子に聞かなかった。

里奈の話を。

すぐに問い詰めることはできなかった。

広告

なぜなら。

今なら分かるからだ。

子はで何度も選択を迫られていた。

仕事か。

庭か。

自分か。

誰かのためか。

そして。

いつも最に残ったのは。

族だった。

子が仕事から帰ってきた。

とは違っていた。

疲れている。

でも。

楽しそうだった。

「今はどうだった」

が聞いた。

子はし驚いた。

「珍しいわね」

「何が」

「あなたが仕事の話を聞くなんて」

は苦笑した。

「今まで聞かなかったからな」

子はし笑った。

「そうね」

その笑顔を見て。

った。

自分は妻を失いかけたのではない。

最初から。

妻の部分しか見ていなかったのだ。

数週

な記事が雑誌に掲載された。

は、

子。

旧姓でもない。

誰かの妻でもない。

彼女自の名だった。

は本でその雑誌を買った。

に帰り。

何度も記事を読んだ。

内容は。

特別な成功談ではなかった。

普通のの暮らし。

失敗。

迷い。

やり直し。

しかし。

読んでいるうちに。

は涙がそうになった。

そこにかれていたものは。

妻が伝えたかったことだった。

子は言った。

「直さん」

「何だ」

つお願いがあるの」

「何でも言ってくれ」

子は笑った。

「そんな簡単に言わないで」

「昔のあなたなら、全部自分で決めていたから」

は苦笑した。

「そうだったな」

「だから」

子は言った。

広告

「これからは、で決めたい」

は頷いた。

「分かった」

その

は会社代の資料を理していた。

もう過に戻るつもりはなかった。

ただ。

残されたものを理したかった。

その

つの封筒を見つけた。

には。

の応募類。

そして。

子がいた枚の

宛先は。

自分だった。

しかし。

送られていなかった。

は震えるいた。

そこには。

たった数

「直さんへ」

「もし私が京へったら」

「あなたはで頑張ることになるといます」

「でも」

「私も、本当は度だけ、自分の力を試してみたい」

は読みめた。

文。

そこには。

こうかれていた。

「それでも私は、あなたときる未来を選びました」

の目から涙が落ちた。

その夜。

は美子にを渡した。

「これ」

子は見た瞬

を変えた。

「どこで……」

「見つけた」

い沈黙。

そして。

子はさく笑った。

「まだ持っていたのね」

「いや」

は首を振った。

「持っていたのは、おだ」

子はを受け取った。

しばらく読んだ

静かに言った。

「若かったわね」

「そうだな」

「でも」

子は続けた。

「このの私も、嘘じゃなかった」

は頷いた。

「分かる」

子の名された本が、さく話題になった。

きな賞ではない。

名作になったわけでもない。

でも。

にとっては分だった。

自分の名で。

自分の言葉で。

残したものだったから。

発売

冊買った。

そして。

サインを頼んだ。

子は笑った。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: