"27年目の再会" 第9話
なぜ。
妻のに関わる決定を、
自分以のが勝にしていたのか。
数。
直は佐藤のむ町へ向かった。
さな駅。
静かな宅。
昔、自分が会社のためにり回っていた京とは違う。
そこで暮らす佐藤は、
直を見るとし驚いた顔をした。
「さん……」
「久しぶりだな」
はしばらく黙っていた。
昔なら。
酒をみながら昔話をしていた相。
しかし。
今は違った。
「聞きたいことがある」
直が言う。
佐藤は目を伏せた。
「奥さんのことですね」
直は息を止めた。
「っていたのか」
「いつか来るとっていました」
「なぜ美子の名を消した」
佐藤はすぐには答えなかった。
そして。
「社」
「あなたは、あのどうしていたか覚えていますか」
直は眉を寄せた。
「何を」
「会社が倒れそうだったです」
直は黙った。
「あなたは毎、会社のことだけ考えていた」
「社員を守ろうとしていた」
「族を守ろうとしていた」
佐藤は続けた。
「でも、奥さんも同じでした」
「何?」
「奥さんも、あなたを守ろうとしていた」
直は拳を握った。
「だから名を消したのか」
佐藤は首を振った。
「違います」
「最初に消したのは、私です」
その言葉がく落ちた。
「なぜ」
佐藤は苦しそうに答えた。
「会社を守るためでした」
「当、も投資も定だった」
「若い社が、妻の考えた企画で成功したとわれることを恐れた」
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直は目を見いた。
「そんな理由で?」
「今なら違いだったといます」
佐藤は静かに言った。
「でも、あのの私は、会社を残すことしか考えていなかった」
「美子さんはっていたのか」
直が聞いた。
佐藤は頷いた。
「っていました」
「そして、何も言わなかった」
「なぜ」
佐藤は答えた。
「あなたが必だったからです」
直は線を落とした。
また。
その言葉だった。
「あなたが頑張っているから」
「あなたが苦しんでいるから」
何度も聞いた言葉。
でも。
今になって分かる。
その言葉の裏側には。
いつも誰かのがあった。
帰り。
直はのでだった。
窓のを流れる景を見る。
昔なら。
仕事の話をしていた。
次の計画を考えていた。
数字を追っていた。
しかし今。
のにあるのは、
美子の姿だった。
若い頃。
版社を目指していた妻。
夜に企画をいていた妻。
自分の成功を隣で見ていた妻。
そして。
何も言わず笑っていた妻。
に帰ると。
美子は原稿をいていた。
直はしばらく黙って見ていた。
「美子」
「何?」
「ごめん」
美子はペンを止めた。
「何のこと?」
「全部だ」
「あなたが悪かったって言いたいの?」
「……」
「違うわ」
美子は静かに言った。
「私も選んだもの」
直は顔をげた。
「でも」
美子は続けた。
「つだけ」
「聞いてほしかったことがある」
「何だ」
「私は、あなたのためだけにきたわけじゃない」
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直は黙った。
「私は私としてきたもあった」
「それを、あなたにってほしかった」
直は頷いた。
「分かった」
初めて。
からそう言えた気がした。
その夜。
直は机の引きしを理していた。
すると。
古い封筒がてきた。
差。
佐藤隆志。
付。
。
には枚の。
そこには。
佐藤が当いたメモがあった。
「社には伝えない」
「美子さん本が望んでいるため」
直は固まった。
「本が望んでいる?」
つまり。
何かを隠したのは、
佐藤だけではなかった。
美子自も。
何かを選んでいた。
翌朝。
直は美子に聞いた。
「」
「あなたは、本当に名をしたくなかったのか」
美子はしばらく黙った。
そして。
「そうね」
と言った。
「なぜ」
美子は窓のを見た。
「怖かったの」
「何が」
「もし、私の名がたら」
「私は、本当にあなたと違うへってしまう気がしたから」
直は言葉を失った。
妻は。
成功する会を失っただけではない。
成功したのまで、
自分で放していた。
そのの夜。
直は美子の机のにある枚のを見つけた。
今度は偶然だった。
そこには、
しい仕事の企画。
タイトル。
「50代から始める、第の」
直は微笑んだ。
妻は過を取り戻そうとしているのではない。
これからを作ろうとしている。
その。
話が鳴った。
里奈だった。
「お父さん」
「どうした」
「お母さんのことで、話したいことがある」
声が震えていた。
「何だ」
「私、ずっと黙っていたことがあるの」
直の表が変わった。