"27年目の再会" 第8話
しかし。
いたページに、だけ見えた。
「もし、あの京へっていたら」
直は息を止めた。
そのには続きがあった。
「私は、きっと別のを歩いていた」
そして。
最の文。
「でも、そのに直さんはいなかった」
直はノートを閉じた。
胸の奥が痛んだ。
妻は自分を捨てなかった。
でも。
別のを選べた能性を、
ずっとのに残していた。
直は翌朝、何も言わなかった。
ノートを見たことも。
写真のことも。
すべて黙っていた。
しかし。
美子には分かっていた。
「見たのね」
朝の途。
突然そう言われて、直は顔をげた。
「……」
「ノート」
直は箸を置いた。
「すまない」
「謝らなくていいわ」
美子は言った。
「いつかることだったから」
直は聞いた。
「おは、京にきたかったのか」
美子はし考えた。
「うん」
初めて。
迷わず答えた。
「きたかった」
その言が、直にはかった。
「でも」
美子は続けた。
「かなかった」
「なぜ」
「あなたがいたから」
直は苦しくなった。
「それは……」
「責めているわけじゃない」
美子は遮った。
「本当に」
「私は、そのの自分で選んだの」
「だから悔だけではない」
直は聞いた。
「じゃあ、今は?」
美子はし笑った。
「今は」
「もう度、自分で選びたいとっている」
その。
直はでを歩いた。
昔、美子が働きたかった京。
彼女が見たかった景。
彼女が選ばなかった未来。
広告
今まで直にとって京は、
仕事の所だった。
成功するための所だった。
しかし。
美子にとっては。
自分自を証する所だった。
午。
直は版社を訪ねた。
美子が今働いている所ではない。
、彼女が採用された会社。
受付で名を伝えると、
古い記録を確認してくれた。
「美子さんですね」
社員が言った。
「記録があります」
直は息を止めた。
「当、非常に評価がかったようです」
「特に、活者目線の文章が評価されていました」
直は資料を見る。
そこには面接担当者のメモがあった。
「このは、10、20にきな仕事をする材」
その文字を見た瞬。
直は子に座り込んだ。
妻は。
最初から特別だったわけではない。
ただ。
誰かに見つけてもらうに、
自分でそのを閉じただけだった。
帰宅すると。
美子はリビングで仕事をしていた。
直は声をかけた。
「美子」
「何?」
「これから」
「俺にできることはあるか」
美子はし驚いた。
「急にどうしたの」
直は答えた。
「今まで、おが俺を支えてくれた」
「でも俺は」
「おが何を望んでいるのか、聞いたことがなかった」
美子はしばらく黙った。
そして。
「じゃあ」
「つお願いしてもいい?」
「何だ」
「私の仕事を」
「あなたの名で紹介しないで」
直は胸を突かれた。
「……」
「昔、あなたの隣にいるとして見られることがかったから」
広告
「今度は」
美子は笑った。
「私の名で仕事をしたい」
直は頷いた。
「分かった」
その夜。
直は会社代の資料をすべて理した。
そして。
枚のを見つけた。
。
宅シリーズ発表の内部資料。
そこには、さなメモがあった。
「美子案」
その横に、別のの跡。
「社判断により削除」
直の顔が変わった。
自分のらないところで。
誰かが美子な部分を消していた。
そして。
その判断をした物の名が、
にかれていた。
直はその名を見て、息を止めた。
それは。
かつて自分が最も信頼していた部の名だった。
直は、その名を何度も見返した。
資料のにかれていた物。
佐藤隆志。
以、会社を支えてきた元専務だった。
直にとって、ただの部ではなかった。
創業当から緒に苦労した仲。
会社が倒産寸だったも、
社員がれていきそうになったも、
「社についていきます」
そう言って残った男だった。
だから。
直には信じられなかった。
「なぜ……」
直は資料を握った。
なぜ佐藤が、美子の名を消したのか。
翌。
直は佐藤に連絡した。
しかし。
話番号は使われていなかった。
会社に問いわせると、
数に退職した、方へ移ったという。
直は迷った。
過を掘り返すことにがあるのか。
もう以のことだ。
美子はを向いている。
自分も変わろうとしている。
それでも。
つだけ確認したかった。