"27年目の再会" 第6話
ただ。
自分のを取り戻そうとしているだけなのだ。
その晩。
直はで斎にいた。
机のには、の内定通。
そして現の雑誌。
つを並べた。
片方は、
妻が諦めた未来。
もう片方は、
妻が取り戻そうとしている未来。
その。
スマートフォンが鳴った。
佐伯元編集からだった。
「さん」
「もうつ、伝えておくべきことがあります」
直は嫌な予がした。
「何ですか」
佐伯は静かに言った。
「奥様が採用を辞退した」
「実はもう度、こちらから連絡しています」
直の表が変わった。
「もう度?」
「はい」
「でも、奥様は来ませんでした」
直は息を止めた。
「なぜですか」
佐伯はしを置いた。
「さん」
「その、奥様はこう言いました」
「夫が望んでいるを、壊したくない」
話が切れた。
直は子に座ったままけなかった。
妻はを諦めた。
でも。
それは自分のためだった。
そして。
その理由のに、
自分の名があった。
翌朝。
直はいつもよりく起きた。
しかし、何をするべきなのか分からなかった。
謝るべきなのか。
説を求めるべきなのか。
それとも。
今まで通り何も言わずにいるべきなのか。
。
直は仕事で問題が起きれば、必ず答えを探してきた。
原因を調べる。
対策を考える。
解決する。
だが。
美子との問題だけは。
簡単な答えがなかった。
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「直さん」
キッチンから声がした。
「コーヒーむ?」
いつもの声。
いつもの朝。
直はその普通さに苦しくなった。
「美子」
「何?」
「俺は……」
言葉が止まる。
美子は振り返った。
「無理に謝らなくていいわ」
直は驚いた。
「なぜ」
「あなたは今、昔の自分を責めようとしているから」
美子は言った。
「でも、のあなたと、今のあなたは違うでしょう」
直は黙った。
「私は、昔のあなたを憎んでいるわけじゃない」
「でも」
「今のあなたには、ってほしいとった」
「私にも、あなたとは別のがあったこと」
その言葉で。
直はようやく理解した。
美子が求めていたのは、過を変えることではない。
過を認めてもらうことだった。
そのの午。
直は会社へ向かった。
元社員の田に会うためだった。
「つ聞きたい」
直は言った。
「美子の企画を、なぜ俺の名で発表した」
田は黙った。
しばらくして。
「社」
「当、誰も奥さんを隠そうとしていたわけじゃありません」
「でも結果にはそうなった」
直は言った。
田は頷いた。
「そうですね」
「なぜ止めなかった」
田は苦笑した。
「社」
「当のあなたは、悪いじゃなかった」
「だから誰も言えなかったんです」
直は眉を寄せた。
「どういうだ」
「社は本気で族を守ろうとしていた」
「本気だったから」
「奥さんがしていることに気付けなかった」
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その言葉は。
会社員代なら、受け入れられなかったかもしれない。
しかし今は。
否定できなかった。
数。
美子は正式に仕事を始めることになった。
さな版社の活企画部。
昔のそのものではない。
でも。
彼女自が選んだ仕事だった。
初勤の。
直は駅まで送ろうとした。
「いいわよ」
美子は笑った。
「でける」
昔なら。
直はきっと、
「送るよ」
と言っていただろう。
でも。
今回は違った。
「分かった」
そう答えた。
美子はし驚いた顔をした。
そして。
「ありがとう」
と言った。
その言が。
直には今までで番かった。
その夜。
美子が帰宅すると。
直は冊のノートを渡した。
「これは?」
「俺がいた」
美子がく。
には、直がこれまで気付かなかったことがかれていた。
娘の入学式。
初めて会社が黒字になった。
族旅。
そして。
最に。
「俺は、美子のをらなかった」
美子のが止まった。
「こんなの……」
「謝罪じゃない」
直は言った。
「記録だ」
「これからるための」
美子はしばらく黙った。
そして。
さく笑った。
「あなた、変わったわね」
直もし笑った。
「遅すぎるけどな」
その数。
直のもとに、通の郵便が届いた。
差は、らない会社。
には古い契約のコピー。
そして枚の写真。
写真には若い頃の美子が写っていた。
隣には、らない男性。
裏面には付。
。
そして。
い文字。
「美子さんが、本当は選ばなかったについて」
直は写真を握りしめた。