"27年目の再会" 第4話
妻が何も、自分ので何かと戦っていたことを。
その。
スマートフォンが鳴った。
らない番号だった。
ると、女性の声がした。
「直さんでしょうか」
「はい」
「突然すみません」
「美子さんについて、お話があります」
直の表が変わった。
「妻の?」
「はい」
話の向こうの女性はしを置いた。
「私は、27に奥様を採用した版社の元編集です」
直のから、帳が滑り落ちた。
「つだけ確認したいことがあります」
「さんは、本当に奥様の採用辞退を本から聞いたのですか?」
直は答えられなかった。
なぜなら。
今まで度も考えたことがなかったからだ。
翌。
直は指定された喫茶へ向かった。
待っていた女性は、70歳い齢だった。
名刺には、
元編集佐伯由紀
とかれていた。
「お会いできてよかったです」
佐伯はそう言った。
「私はずっと迷っていました」
「何をですか」
「奥様に言うべきか」
直は背筋を伸ばした。
「何をっているんですか」
佐伯は古いファイルをテーブルに置いた。
「、美子さんは採用されました」
直は頷いた。
それはもうっている。
「でも、その」
佐伯は続けた。
「突然、辞退の連絡が来ました」
「本からですか?」
直が聞いた。
佐伯は首を横に振った。
「いいえ」
その瞬。
直の臓がく鳴った。
「では、誰が」
佐伯は静かに答えた。
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「ご主です」
直は言葉を失った。
「待ってください」
「私は……」
「妻と相談して決めたとっていました」
佐伯は彼を見た。
「奥様は、相談されたと言っていましたか?」
その質問に。
直は答えられなかった。
記憶を探した。
確かに。
自分は言った。
「今は難しいだろう」
「娘がさいから」
「俺が頑張るから」
でも。
美子が確に、
「辞退する」
と言った記憶はなかった。
「さん」
佐伯の声が静かに響く。
「あなたは奥様の未来を奪ったといますか?」
直は俯いた。
「分かりません」
「でも」
佐伯は言った。
「奥様は、そのもあなたを責めませんでした」
「なぜですか」
「分かりません」
佐伯は窓のを見た。
「ただ、つだけ覚えています」
「面接、奥様が言った言葉を」
直は顔をげた。
「何と言ったんですか」
佐伯は答えた。
「私は、仕事を諦めるんじゃありません」
「今は別のものを選びます」
直は胸が苦しくなった。
帰宅すると。
美子は庭でを植えていた。
直はしばらくその姿を見ていた。
27。
毎見ていた背。
でも。
自分は何も見ていなかった。
「美子」
「何?」
「俺は……」
言葉がなかった。
謝るには簡単すぎる。
「すまなかった」
それだけではりない気がした。
美子はを払いながら言った。
「何をったの?」
直は驚いた。
「っていたのか」
「あなたが調べていること?」
美子はし笑った。
「分かるわよ」
「緒にいるんだから」
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直は苦笑した。
しかし、その笑顔はすぐ消えた。
「なぜ黙っていた」
美子はを止めた。
「何を?」
「俺が勝に辞退したこと」
い沈黙。
そして美子は言った。
「あなたが忘れていたから」
直は息を止めた。
「忘れていた?」
「そう」
美子はゆっくりちがった。
「あなたは、私のを壊そうとしていたわけじゃない」
「族のためだとっていた」
「だから私は、責める理由がなかった」
その言葉が番苦しかった。
られる方がまだ楽だった。
「じゃあ、なぜ今まで」
直が聞く。
美子はし考えた。
「あなたが幸せそうだったから」
「え?」
「自分の会社をきくして」
「族を守ったとって」
「嬉しそうだったから」
直は黙った。
美子は続けた。
「でもね」
「最、し考えるようになったの」
「私はあなたの妻だったのか」
「それとも、あなたのを支える役だったのか」
その夜。
直は初めてった。
妻が求めていたものは、
成功でも。
おでも。
謝罪でもなかった。
ただ。
のとして見てほしかったのだ。
翌朝。
里奈から話が来た。
「お父さん」
「何だ」
「お母さん、もう度働くつもりみたい」
直は驚いた。
「今から?」
「うん」
「版社の仕事」
直は言葉を失った。
「でもね」
里奈は続けた。
「お父さんには言わないでって言われてた」
「なぜ」
「お父さんがまた」
「“族のために”って言うとったから」
直は話を握ったままけなかった。
その瞬。
初めて理解した。
自分が失ったのは、
妻の過ではない。
妻のこれからだった。