"消された名前" 第11話
そこには。
い圭介がいた。
私がっていた圭介。
ばかり語っていた青。
失敗すると落ち込み。
でも。
次のにはまたちがった。
『由美がいることをっているはい』
『だから、俺は余計に怖くなる』
『みんなが本当のことをっている』
『俺の力ではないことを』
涙が落ちた。
でも。
しいからではなかった。
20の圭介を。
しだけ理解してしまったから。
『いつか』
『俺が本当に自分の力を信じられるようになったら』
『必ず君の名を戻す』
『そのまで、待っていてほしい』
最の文。
そこだけは。
何度読んでも苦しかった。
『ごめん』
『しだけ、俺にをください』
私はを閉じた。
しだけ。
圭介はそう言った。
でも。
そのしだけが。
20になった。
美咲さんは黙っていた。
私は聞いた。
「あなたは、このことをっていたんですか?」
「はい」
「ずっと?」
「はい」
「じゃあ、なぜ何もしなかったんですか?」
美咲さんは俯いた。
「私も、自分のを守りました」
その答えに。
私はし驚いた。
「正直ですね」
「言い訳できません」
美咲さんは続けた。
「私は、社を成功させたかった」
「でも」
「そのために、さんが何を失うかを考えなかった」
私は彼女を見た。
悪いには見えなかった。
でも。
だからこそ。
余計に苦しかった。
きな傷は。
悪だけで作られるわけではない。
数。
私は圭介に会った。
を返した。
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「読んだ」
圭介は黙っていた。
「どうだった?」
私はし考えた。
「あなたらしいとった」
「え?」
「優しい」
「でも、い」
圭介の顔が歪んだ。
「圭介」
「あなたは私を嫌いだったわけじゃない」
「でも」
「切にする方法を違えた」
圭介は俯いた。
「俺は……」
「何?」
「いつか戻すつもりだった」
私は頷いた。
「ってる」
「だから余計につらい」
もし。
最初から悪があったなら。
私は簡単にれた。
でも。
圭介は私をしていた。
そののに。
自分を守る気持ちも混ざっていた。
だから。
私は20、気づけなかった。
「婚は取り消さない」
私が言うと。
圭介は顔をげた。
「分かってる」
「でも」
「つだけお願いがある」
「何?」
「最に」
「俺の妻だったとしてじゃなく」
「由美というとして」
「もう度、君に向きいたい」
私はすぐには答えなかった。
昔なら。
その言葉だけで許していたかもしれない。
でも。
今の私は違った。
私はもう。
誰かのの部ではない。
数ヶ。
私はさな事務所を借りた。
会社を作るためではない。
昔からやりたかった仕事を始めるため。
企業の相談。
若い経営者の支援。
昔の自分がしていたことを。
今度は自分の名で。
業の。
最初のお客さんが来た。
名刺を渡す。
そこには。
「由美」
ただ、それだけ。
でも。
その名を見た瞬。
私はし泣きそうになった。
20ぶりに。
自分のが戻ってきた気がした。
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そして。
その。
通のが届いた。
差は。
圭介。
私はすぐにはけなかった。
でも。
封筒の裏を見る。
そこには言だけ。
『ありがとう』
とかれていた。
私はった。
には。
取り戻せないがある。
消された名も。
言えなかった言葉も。
戻らない。
でも。
失ったをったことで。
初めて始められるもある。
業してから半が経った。
さな事務所だった。
駅からしれた古いビルの。
広くはない。
でも。
初めて入った。
私は議なほどした。
ここには。
誰かの名の横につ必がなかった。
「社の妻」
「さんの奥さん」
そんな呼ばれ方もしない。
ただ。
由美。
それだけだった。
仕事はしずつ増えていった。
昔の取引先から紹介を受けることもあった。
若い経営者から相談を受けることもあった。
「どうしてそんなに会社のことが分かるんですか?」
そう聞かれるたび。
私はし迷った。
昔なら。
「夫を伝っていたからです」
そう答えていたかもしれない。
でも今は違う。
「昔から、こういうことが好きだったんです」
そう答えた。
それは嘘ではなかった。
ある。
の若い女性が相談に来た。
まだ30歳くらい。
さな会社を経営していると言った。
「社員には言っていません」
「何をですか?」
「実は、自信がないんです」
その言葉を聞いた瞬。
昔の圭介をいした。
を語りながら。
誰よりもだった。
私は彼女に言った。
「自信があるから経営者になるんじゃないといます」