"消された名前" 第5話
「これは?」
「社が昔、保管していたものです」
私は驚いた。
「圭介が?」
「はい」
箱のには。
古い社員証。
名刺。
そして。
枚の写真。
そこには20の私と圭介がいた。
会社設の。
で笑っていた。
裏側には文字があった。
『製作所、最初の』
私は指でその文字をなぞった。
最初の。
その言葉を見た瞬。
胸が苦しくなった。
なぜなら。
圭介はこれを持っていた。
ずっと。
「だったら……」
私は呟いた。
「どうして?」
佐伯さんは答えなかった。
その代わり。
静かに言った。
「さん」
「まだ、社が話していないことがあります」
私は顔をげた。
「何ですか?」
佐伯さんは箱の奥から、もう枚のを取りした。
「会社がきくなる直」
「社は度、会社を辞めると言ったことがあります」
私は驚いた。
「そんな話、聞いていません」
「当然です」
佐伯さんは言った。
「その、社を引き止めたのは……」
しを置いて。
「さんです」
私は首を横に振った。
「覚えていません」
佐伯さんはしそうに笑った。
「それは違います」
「さんは覚えていないんじゃありません」
「忘れようとしていたんです」
私はそのを理解できなかった。
でも。
その夜。
に帰って古いアルバムをいた。
枚の写真が落ちてきた。
20。
会社設の。
その裏には。
圭介の字でかれていた。
『由美がいなければ、俺はここまで来られなかった』
広告
私はしばらくけなかった。
なぜなら。
その文字をいたは。
今。
私に婚届を渡しただった。
そして私はまだらなかった。
圭介が20、私の名を会社から消した理由。
それは。
単なる見栄や成功欲だけではなかった。
もうつ。
私に絶対に言えなかった理由があった。
20。
会社設から目。
製作所は、順調に成しているように見えた。
社員も増えた。
取引先も増えた。
から見れば。
誰もが成功と言った。
でも。
その裏側で。
つのきな問題が起きていた。
私はらなかった。
圭介が、で抱えていたことを。
佐伯さんから渡された資料。
そこには、当の会社の財務状況がかれていた。
数字を見た瞬。
私は息を止めた。
「これは……」
会社は危だった。
表面では成していた。
でも。
内部にはきな借があった。
「どうして……」
私は呟いた。
佐伯さんは言った。
「社は誰にも言えなかったんです」
「あなたにも?」
「はい」
私は資料を閉じた。
なぜ。
なぜ私に言わなかったのか。
その夜。
私は圭介に話をした。
「20の会社のこと」
「何の話?」
「借のこと」
沈黙。
まただった。
あの沈黙。
昔から何度もあった。
私は質問する。
圭介は答えない。
そして私は。
勝に理解したつもりになっていた。
「どうして言わなかったの?」
圭介はさく息を吐いた。
「由美に配をかけたくなかった」
私は笑った。
広告
「違うでしょう」
「え?」
「あなたは、私にいところを見せたくなかっただけ」
圭介は何も言わなかった。
20。
圭介は会社を畳もうとしていた。
その。
私が止めた。
「もう度だけやってみよう」
「無理だ」
「どうして?」
「俺には社になる器がない」
私はその、初めてった。
「じゃあ、どうして始めたの?」
「だったから」
「なら、最まで向きって」
その言葉で。
圭介はもう度ちがった。
でも。
その。
私はらなかった。
圭介が別の選択をしていたことを。
「由美」
圭介は話の向こうで言った。
「俺は、君を守りたかった」
「守る?」
私は聞き返した。
「名を消すことが?」
「……」
「私が何もしていないになることが?」
圭介は答えなかった。
翌。
私は会社へった。
昔の資料をもっと見たかった。
自分が何を失ったのか。
りたかった。
そこで。
私はつのファイルを見つけた。
古い社員名簿。
創業初期。
そこには。
圭介の名。
佐伯さんの名。
そして。
私の名。
確かにあった。
しかし。
その次のページ。
正式登録された社員名簿では。
私の名だけが消えていた。
「誰が消したんですか?」
私が聞くと。
佐伯さんは答えなかった。
でも。
線だけで分かった。
「圭介ですか?」
い沈黙。
そして。
佐伯さんはさく頷いた。
その瞬。
私は初めてりをじた。
婚されたことではない。
好きなができたことでもない。
もっといところ。
20。
私は夫の隣にいたとっていた。
でも。
夫は私を隣ではなく。
ろに置いていた。
そのの夜。
圭介からメールが来た。