みかん小説
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"消された名前" 第1話

婚届にサインした翌、私は夫の会社から話を受けた。

さん……お願いがあります」

話の向こうの男性は、何度も言葉を選んでいた。

「社には、まだ何も話していませんよね」

私は黙った。

なぜなら、その質問のが分からなかったからだ。

「何をですか?」

数秒の沈黙。

そして、その男性はさな声で言った。

「奥様が、あの会社にいたことです」

その瞬

私は初めて気づいた。

22緒に暮らした夫は。

私について、何をっていたのだろう。

由美、46歳。

私は普通の主婦だった。

なくとも、周囲から見ればそうだった。

朝は夫よりく起きる。

を作る。

洗濯をする。

の支払いを管理する。

夫のシャツのボタンが取れていれば直す。

娘が学へってからは、が増えた。

所のからは、

さんは旦さんを支える良い奥さんね」

と言われた。

私はいつも笑っていた。

「そんなしたことしていません」

本当にそうっていた。

なくとも、までは。

夫の圭介は、49歳。

さな町だった会社を、きくしただ。

20、社員も数しかいなかった会社。

今では80が働いている。

雑誌の取材を受けたこともある。

社員のでは、

「努力すればは叶う」

そう話すだった。

私はその姿を、ずっとくで見ていた。

だから。

夫の成功を疑ったことは度もなかった。

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婚の話をされたのは、だった。

圭介はいつもより静かな顔をしていた。

「由美」

その呼び方で分かった。

何か事な話だと。

「俺たち、もう度考えた方がいいとう」

「何を?」

「これからの

テーブルのに置かれた

婚届。

私はしばらく見ていた。

「理由は?」

圭介は困ったように笑った。

「由美を責めたいわけじゃない」

「ただ……」

「俺たちは、もう違うんだとう」

違う。

便利な言葉だった。

何が違うのか。

いつから違ったのか。

聞いても、きっと答えはない。

「好きながいるの?」

私が聞くと。

圭介は目を伏せた。

それだけで分だった。

議だった。

涙はなかった。

りも、それほどなかった。

ただ。

20緒にいたが、自分のらない所へってしまったような覚。

「そのと幸せになれるとう?」

私が聞くと、圭介はし笑った。

「今度こそ、自分らしいを歩める気がする」

その言葉を聞いた

私は初めて違を覚えた。

自分らしい

では。

今まで私と緒にいたは。

誰のだったのだろう。

私は婚届にサインした。

圭介は驚いた顔をした。

「本当にいいのか?」

「あなたが望んだことでしょう」

そう答えた。

でも。

る準備をしている

私はつだけ気になった。

夫の斎。

そこにあった古い写真。

20、会社を始めた頃の写真。

私は何度も見たことがある。

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でも、その初めて気づいた。

写真の端に。

私が写っていた。

そして。

その隣にいた男性が、私を見て笑っていた。

かれていない。

ただ、裏側にさな文字があった。

「創初期メンバー」

私はその写真を戻した。

なぜ今まで気づかなかったのか。

自分でも分からなかった。

婚して

話が来た。

は、夫の会社の佐伯さんだった。

昔から会社にいる

何度か会ったことがある。

「突然すみません」

「どうしましたか?」

佐伯さんは答えるに、確認した。

「奥様……いや、さん」

その言い直しがし寂しかった。

もう私は社ではない。

「はい」

度、会社へ来ていただけませんか」

「なぜですか?」

「確認していただきたいものがあります」

私は断ろうとった。

もう夫の会社とは関係ない。

そうった。

でも。

次の言葉で、が止まった。

「20から保管されているものです」

20

その数字が胸に引っかかった。

会社へくと。

議なことに。

社員たちは私を見るとげた。

「お久しぶりです」

「お元気でしたか」

私は戸惑った。

なぜなら。

私はこの会社のではない。

そうっていたから。

佐伯さんは奥の部へ案内した。

そこには古い段ボール箱がつ置かれていた。

「これを見てください」

箱のには。

古い類。

帳。

資料。

そして枚の

私はそれを見た瞬、息が止まった。

そこには。

20の私の字があった。

予測。

取引先の名

経費計算。

全部、覚えている。

なぜなら。

これは私が毎晩作っていたものだった。

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