"七年目の爪痕" 第11話
野寺が計を指差した。
午分。
「そろそろ、始まっているはずですよ」
その言葉を図にしたかのように、俊介のポケットので、スマートフォンが恐ろしい勢いで鳴を始めた。
度画面を切り、再び鳴り響く。
着信表示には『本部コンプライアンス統括部 統括部』の文字。
俊介の顔が、気を通り越して青黒く変していった。
午分。
埼玉・川越駅にそびえつ、方の支ビル。
自ドアをくぐり、執務へとを踏み入れた俊介を待っていたのは、いつもの部たちの形式な挨拶ではなかった。
異常な静寂。
誰もキーボードを叩いていない。名を超える員たちが、まるで汚物を見るかのような目を、斉に俊介へ向けていた。
「佐伯次」
ややかな声が、支席の脇から響いた。
ダークスーツにを包んだ、見覚えのない名の男たち。胸元には、本部の監査バッジが鈍くっていた。
「本部コンプライアンス統括部、並びに事監査部だ。……別へ来てもらおうか」
俊介の喉が、ヒュッと鳴った。
「か、監査……? なんの用ですか、私はこれからの産融資の決裁が……」
「その産融資の件だよ」
央につ監査官が、酷な目で俊介を射抜いた。
「今朝番で、弁護士同伴のもと、貴殿の妻君名義による告発状と、故・佐伯泰造氏が保管していた内部告発資料の原本が本部に提された」
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監査官は元のタブレット端末を俊介に向けた。
画面に映しされていたのは、俊介が私に設していたFX座と、同の架空取引座とので交わされた、過の正送履歴だった。
「さらに、本あなたが実しようとしていた千万円の産担保ローン。担保提供者である佐伯真帆さんの署名捺印……跡鑑定の結果、あなたが偽造したものと判定された」
「ち、違う! あれは妻の同を得て……!」
「嘘をつくな!」
支がデスクを激しく叩いてちがった。その顔はりで真っ赤に染まっていた。
「佐伯! 貴様が顧客の座から流用したは、すでに千百万に達している! 担保をでっちげてそのを凌ごうとしたんだろうが! の信用をどれだけ失墜させれば気が済むんだ!」
フロアに、支の号が反響した。
若い員たちが息を呑み、女性員たちが軽蔑の差しを向ける。
かつて「次期支候補」「エリート」と持て囃され、真帆を「無職の穀潰し」と嘲笑っていた男のメッキが、のもとに剥ぎ取られていく。
「待ってください……支、返せます! 親父の遺産が入れば……!」
「遺産などないことは、すでに弁護士から確認済みだ!」
監査官がたく遮った。
「本付で、貴殿を無期限の懲戒休職処分とする。私物の回収は許されない。これより所轄の川越警察署へ同し、業務横領および印私文偽造・同使の疑いで事聴取を受けてもらう」
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「警察……? そんな、待ってくれ! 俺のキャリアはどうなる!? 佐伯の名誉は……!」
の屈な監査スタッフが、から俊介の腕を容赦なく固めた。
に引きずられながら、俊介はフロアの隅を見つめた。
そこには、今朝まで俊介の腕にしなだれかかり、敷のリフォームをねだっていた派遣社員の美咲がっていた。
美咲は、俊介と目がった瞬、底気の悪いものを見るように顔を顰め、すっと線を逸らした。
そのには、自分のロッカーから私物をまとめた袋が握られていた。
「美咲……美咲! 助けてくれ、俺が悪かったんじゃない、全部あの女が……!」
俊介の惨めな叫び声は、エレベーターのいスチール扉が閉ざされる音によって、無残に断ち切られた。
。
たいが、佐伯邸の瓦根を激しく叩いていた。
のに、台の型トラックと、数名の作業員が待していた。
扉には、さいたま方裁判所の執官によって、赤く捺印された『渡断仮処分執告』が貼りされていた。
真帆は傘も差さず、黒いコートの襟をてて、玄関のたたきにっていた。
その隣には、野寺弁護士が分い執申をに控えている。
のから、ヒステリックな喚き声と、物が壊れる音が響いてきた。
「しなさいよ! 触るんじゃないわよ、無礼者!」