"七年目の爪痕" 第4話
りは、沸点を通り越すと、信じられないほどの徹な静寂に変わる。
真帆はスマートフォンを伏せると、掌のの真鍮の鍵を見つめた。
この鍵の形には、見覚えがあった。
敷の裏、鬱蒼とした林のに建つ、古い造の平。
泰造が、務の具や材を保管し、でに没していた元・作業。
倒れてからの、泰造は俊介たちに「あそこには絶対に入るな」「用にづいたら勘当する」と厳しく言い渡し、頑丈な京錠で封鎖させていた所だった。
『』
泰造の掠れた声が、の奥で蘇るようだった。
真帆はちがった。
計を見る。午分。
夜けのが、もっともくなる帯だった。
タクシーを呼ぶすら惜しかった。真帆はのがった湿った夜気を切り裂きながら、静まり返ったを、再びあの呪われた敷へと歩き始めた。
午の佐伯邸は、んだように静まり返っていた。
母の戸はすべて閉ざされ、階の俊介の部のかりも消えている。
真帆は息を殺し、敷側の通用にをかけた。
錆びついた蝶番を慎に押しき、玉砂利を避けて、敷の端を忍びでむ。
目指すのは、母の裏に隠れるように建つ、坪ほどの古いだった。
黒ずんだ杉板張りの壁はに晒され、見するとただの物置にしか見えない。
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引き戸のには、真帆の記憶通り、真鍮製の頑丈な京錠がぶらがっていた。
真帆はポケットから取りした鍵を、鍵穴に差し込んだ。
カチリ。
、度も回されたことがないはずの錠は、驚くほど滑らかに音をてていた。内部に定期に油が差されていたかのような軽やかさだった。
引き戸を数センチだけけ、体を滑り込ませる。
すぐに戸を閉め、内側から閂を落とした。
暗の、真帆はスマートフォンのライトを点灯させた。
が空を切り裂いた瞬、真帆は息を呑んだ。
「……嘘でしょう?」
をつくはずの埃やカビの臭いは、切しなかった。
漂ってきたのは、微かな檀のりと、換気システムの静かな駆音だった。
埃だらけの材や械が転がっているはずのの内部は、完全に改装されていた。
壁面に張り巡らされた耐性の膏ボード。最式の除湿が隅でさな青いランプを灯し、内を定の湿度に保っている。
そこは物置などではなかった。
厳に管理された、まるでさな「庫」だった。
部の央には、泰造が昔使っていたな欅の枚板のデスクが置かれていた。
そのには、類の束が然と積まれ、最段に通の角形号の茶封筒が置かれていた。
表面には、震える跡で、力くこう墨されていた。
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『佐伯真帆様』
違いなく、泰造の直だった。
倒れる、まだ自由にがいていた頃の、あの勢いのある体。
真帆は震えるで封筒を取りげた。
封は糊付けされておらず、から数種類の類が滑りしてきた。
番にあったのは、の通帳だった。
見覚えのない、信託の通帳。座名義は『佐伯泰造』。
恐る恐る頁をいた真帆の目は、そこに記された数字の羅列に釘付けになった。
毎。
きっかり『285,000円』の入が記録されている。
摘欄には『ネンキン』、そして『トクベツカイゴキュウフキン』。
入されたそののうちに、全額が別の座へと自送されていた。
送先の名義は、『佐伯泰造遺言執信託 受託者・弁護士野寺律』。
。
か分、回の断もなく。
送総額は、千百万を超えていた。
「これ……お義父さんの……?」
真帆のので、記憶の断片が激しく滅した。
俊介はいつも言っていた。
『親父のなんて数万の雀の涙だ。医療費とオムツ代で毎赤字なんだよ。俺の料から持ちしてやってるんだから、おは文句言わずに介護しろ』
淑恵も同調していた。
『うちのが遺した財産なんてこれっぽっちもありませんよ。真帆さん、もっと節約してちょうだい』
すべて、嘘だったのだ。
泰造のとい障害介護付は、俊介たちの座には円も入っていなかった。
泰造は倒れる直、あるいは倒れた直のわずかな猶予のに、自の収入のすべてを俊介たちのの届かない「信託座」