"午前五時の朝餉" 第6話
当、健は別の型案件の現にかかりきりで、自宅の改修事は請けの務と、加奈子に丸投げしていた。
『キッチンの収納は、私が使いやすいようにさんと相談して決めていいかしら』
そう言った加奈子の控えめな笑顔。
『ああ、好きにしろ。どうせおしか使わない所だ』
そう吐き捨てて、自分は図面の最終確認すら印鑑を押して済ませていた。
健は具箱から型のバールと力なLEDライトを掴みし、階のパントリーへと向かった。
棚板をすべて乱暴にへ叩き落とす。
奥の壁板には、目調の化粧板が貼られていた。
隅のビスを確認する。
見すると、頑丈に留められているように見える。
だが、のビスを指で触れた瞬、カチリと乾いた属音がして、ビスがマグネットごと浮きがった。
ダミーだった。
健はバールの先端を板の隙にねじ込み、体をかけて引き絞った。
バキッという鈍い音と共に、縦メートル、横センチほどの隠し扉が、内側へ向かって音もなくいた。
埃の匂いはしなかった。
漂ってきたのは、使い古された柔剤の匂い。
加奈子がいつも使っていた、物のシトラスのりだった。
「加奈子……!」
健はバールを握り直したまま、隙にライトのを差し入れた。
の帯が、暗のを貫く。
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そこは、がかろうじて横になれるほどの、細い空だった。
には、防音用のウレタンマットが隙なく敷き詰められている。
壁の隙からは、キッチンの換気ダクトがすぐそこを通り、通気のルーバーを通して、キッチンのがく見ろせるようになっていた。
ここから、すべてを見ていたのだ。
毎朝、志保が狼狽し、健が鳴り散らす姿を。
ライトを奥へめる。
壁際に、きちんと畳まれたのフリース毛布が枚。
半分ほどの減ったペットボトル。
そして、柱の部に、く突きてられたものがあった。
黒い柄の、な徳包丁。
数、包丁スタンドから消えていた、加奈子の嫁入り具だった。
刃先は柱にセンチほどもい込んでおり、引き抜くことすら容易ではないほどい力で打ち込まれていた。
だが、そこに加奈子の姿はなかった。
毛布の表面にを置く。
え切っていた。
ここをってから、すでに数は経過している。
包丁の刃の根元に、枚の片が突き刺さっていた。
レシートの裏に、見慣れた青いボールペンでかれた文字。
『今夜、蓮がすべてをる』
健は片を握りつぶし、喉の奥から獣のような呻き声を漏らした。
夕方。
はたいがり始めていた。
健はキッチンの隠し部から包丁を引き抜き、リビングのローテーブルのに転がしていた。
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志保は自に閉じこもり、内側から鍵をかけててこない。
音がトタン根を激しく叩く、玄関の子錠がピピッと子音を鳴らし、解錠された。
音がつ。
傘を畳む音。
リビングの引き戸がき、蓮が入ってきた。
濡れた制のまま、蓮はまっすぐに健ののソファへと歩み寄り、背負っていたリュックをろした。
「どこへってた」
健がく唸るように言った。
「学から無断欠席の連絡があったぞ。親を舐めてるのか」
蓮は答えず、リュックのファスナーをけた。
取りしたのは、今朝持ちした祖父のネクタイピン。
そして、あの分い『活記録』のノートだった。
ドサリと、ノートがテーブルのに放りされる。
刃をむきしにした包丁のすぐ隣に。
「蓮、お……」
「おじいちゃんがんだ夜のこと、全部いてあった」
蓮の声は、驚くほど静かだった。
声変わりを終えたばかりのの声が、淡々と事実を紡いでいく。
「の。午分。おじいちゃんが胸を押さえて倒れた。お母さんは救急を呼ぼうとしたけど、父さんとおばあちゃんが話を取りげて、お母さんを物置に閉じ込めた」
「デタラメだ!」
健はテーブルを叩いてちがった。
「そんな妄を信じてるのか! あの女はがおかしいんだ! おを俺から引きすために嘘百を並べててるだけだ!」
「嘘じゃない」
蓮はじなかった。
父親の声を真っ向から受け止め、線を逸らさない。