"午前五時の朝餉" 第3話
炊飯器の蓋をける。
湯気と共に現れたのは、鮮やかな赤に染まった米粒のだった。
豆が均に散らばり、艶やかに炊きげられた赤飯。
祝いの席でしかにしないはずの、完璧な赤飯だった。
「……何なんだよ、これ」
いつのにか、蓮が台所の入りにっていた。
制のシャツのボタンも留めず、青ざめた顔で炊飯器を見つめている。
「蓮、づくな」
健が制止するのを無して、蓮は調理台の引きしから製のしゃもじを取りした。
「蓮!」
蓮は無言のまま、しゃもじを赤飯の央に突き刺した。
サク、という米を裂く触の直、カチリとい応えが元に返ってきた。
米のに、何かが埋まっている。
蓮は息を呑み、慎にしゃもじを傾けた。
湯気の奥から持ちがってきたのは、耐性の品用ラップで何にも固く巻かれた、細い属の塊だった。
「取れ、蓮! くそれをに落とせ!」
健の制止をよそに、蓮はその塊を素で掴み取った。
さに顔をしかめながら、何ものラップを指先で引き裂いていく。
ビニールが剥がれるたびに、豆のりに混じって、防虫剤のような古い樟脳の匂いが広がった。
最の膜が剥がれ落ちた。
蓮ののひらのに転がりたのは、本のネクタイピンだった。
メッキが施された古い細。
表面には、控えめな桜のびらの彫刻が刻まれている。
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それを見た瞬、に座り込んでいた志保のから、空気が抜けるような音が漏れた。
「……嘘でしょう」
志保の目が、見かれたまま直した。
「それ……お父さんの……」
の、急性の筋梗塞で突然くなった健の父親。
その骸の胸元につけられ、棺ので骨と共にになったはずの、祖父の形見だった。
志保はそのから歩もけなくなり、過呼吸を起こしてリビングの絨毯のに倒れ込んだ。
健はネクタイピンを奪い取ろうとしたが、蓮はそのを払い、ネクタイピンを握りしめたまま階の自へと駆けがった。
ドアを閉め、内側から鍵をかける。
のひらのにある属は、炊飯器のを吸ってまだ嫌なほど温かかった。
祖父のネクタイピン。
なぜこれがここにあるのか。
祖父がくなった夜のことは、蓮の記憶にも焼き付いている。
夜、階から聞こえた激しい物音。
蓮が部をようとしたとき、母の加奈子が血相を変えて階段を駆けがってきて、蓮の胸を抱きしめた。
「蓮、部にいなさい。見ちゃ駄目」
母の腕は刻みに震えていた。
救急が到着したのは、それから以も経っただった。
祖父はすでに息を引き取っていた。
医師は「就寝の発作による即」と診断し、警察も事件性なしとして処理した。
祖父の遺品は志保の指示ですぐに理され、用していたスーツや物類はすべて葬儀で棺に納められたはずだった。
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蓮は机のに座り、引きしの鍵をけた。
番のい引きし。
使わなくなった教科の束のさらに、底板の隙に、冊の分いノートが滑り込ませてあった。
母がてくの夕方、蓮の留守に机のに置かれていたものだ。
表には、見慣れた母の几帳面な文字で「活記録」とだけかれていた。
計簿のようであり、々の雑をき留めた記のようでもあるノート。
母がてった当初、蓮はこれをくのが怖くて奥底に隠していた。
自分を捨てて消えた母へのりと、裏切られたといういがあったからだ。
だが、蓮は震える指先でページをめくった。
ノートには、、蓮がまれた直からの々の献と、その横に記されたいりきが並んでいた。
蓮の線が、昨の付——の欄で止まった。
そこには、何もかれていなかった。
ただ、ノートをさらに過へ、過へと遡っていった。
。
蓮が学を卒業したの。
【】
【献:筍ご飯、菜のの芥子え、あさりの噌汁】
蓮の喉が引きつった。
昨の朝、炊飯器に入っていたものと完全に致していた。
その横の余に、さな鉛の文字がびっしりとき込まれていた。
『お義母様にお茶の銘柄が違うと罵倒される。台所で急須の湯を浴びせられた。