"身代わりの爪痕" 第12話
そして、そのにあった分い茶封筒。
志乃が封筒から類を引きし、スマートフォンのを当てた瞬、臓が凍りついた。
それは、命保険会社の証だった。
『被保険者:神 志乃』 『保険受取:神 拓真』 『保険額:億千万円』
特約事項の欄には、赤ペンで几帳面にアンダーラインが引かれていた。 《自宅内における慮の事故による溺、または急性全の、保険は満額支払われるものとする》
そして、保険証にクリップで留められていた枚のメモ用。 そこには、拓真の几帳面な跡で、未来の付が記されていた。
『 入浴ノ事故トシテ処理予定』
今から、ちょうど週の付だった。
血の気が完全に引き、志乃のから類が滑り落ちそうになった、そのだった。
パチリ。
部のかりが、眩いばかりに点灯した。
「……夜分にだね、志乃」
斎の入りに、ネイビーのシルクのバスローブを羽織った拓真がっていた。 そのには、湯気をてるいマグカップが握られていた。
斎の入りにつ拓真の元には、廊のたいが広がっていた。
パジャマ姿の志乃のには、億千万円の命保険証と、眠導入剤のシートが握りしめられていた。 隠しようのない決定な証拠。だが、拓真の端正な顔ちには、りも焦りも浮かんでいなかった。
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彼はただ、壊れた化製品を眺める技術者のような、淡で無質な目をしていた。
「夜分にだね、志乃」
拓真は湯気をてるマグカップを持ったまま、ゆっくりと部のへと歩みをめてきた。 歩、また歩と距が縮まるたびに、靴底が擦れる静かな音が絨毯に吸い込まれていく。
「鍵をけたのは、ヘアピンかい? そんな器用な真似ができるなんてらなかったよ」
「……拓真さん、これは……何なの?」
志乃は掠れた声を絞りした。ずさりしようとしたが、背はすでにい本棚にぶつかっていた。逃げはどこにもない。
「何って、見れば分かるだろう。君の万がに備えた保険だよ」
「週に……私が浴で事故する予定って、いてあるわ。美加さんのも、こうやって……」
「美加」という名をにした瞬、拓真の元の笑みがすっと消えた。 眉ひとつかさず、彼はただ志乃の瞳を覗き込んできた。
「君は、余計なことばかりってしまうね。里帆さんと同じだ。……せっかく、あんな儘な姉と違って、従順で扱いやすい娘だとっていたのに」
拓真のから紡ぎされる言葉には、妻へのの欠片すら残っていなかった。
「母さんから百万円の借の話を聞いたかい? かったよ。君のような、文句も言えず、親の顔を窺ってきることしかできない女を買い取るには、実に頃な値段だった」
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「私を……最初から殺すつもりで?」
「まさか。最初はちゃんと妻として飼ってあげるつもりだったさ。美加が使っていたあのブレスレットをつけて、僕の言う通りにきてくれれば、何自由ない暮らしをさせてあげたんだ」
拓真はマグカップを持ちげ、志乃の顔のに突きした。 甘いミルクの匂いに混じって、わずかに苦い薬品の匂いが漂ってくる。
「けれど、君は僕のルールを破った。浴の鍵を調べ、過を嗅ぎ回り、僕の庫をけた。……壊れてしまった玩具を、いつまでも元に置いておく趣はないんだよ」
拓真のが、素く志乃の顎を掴んだ。 鉄万力のような力で顎を固定され、志乃のが無理やりこじけられそうになる。
「予定より週くなったけれど、構わない。今夜、このホットミルクを全部んで、静かに湯に沈みなさい。そうすれば君の母親の借も、神の名誉も、すべて丸く収まるんだから」
拓真の瞳に宿る狂気が、志乃の界を埋め尽くした。 抵抗できずにんでいった美加の姿が、脳裏をよぎる。
殺される。 この男の都のいい形として、たいので息絶える。
――絶対に、嫌だ。
志乃は全の力を腕に込め、拓真の首をからねげた。
バシャリ、とい液体が宙をった。 沸騰寸のホットミルクが、拓真の胸元と顎のあたりへ容赦なくり注ぐ。
「っ……!?」
拓真がく呻き、顔を押さえてたじろいだ。