"留守番を命じられた妻" 第9話
「指示したら、自分が世話をしたことになるのか」
正志がたく返すと、子は黙り込んだ。
私は帳の最のページをいた。旅の欄には、「子の寿祝い・旅館32万円」といてある。
「今回の旅も、私が子さんのために用したものです。それを2は、私だけをへ残し、浩司さんのを連れて利用しました」
親戚の線がさらに厳しくなった。子はハンカチを目元からし、泣くことすら忘れたように私を睨んだ。
子は慌てて正志の腕へを伸ばした。
「でも、夫婦で暮らしていたなのよ。法律がどうであっても、男である浩司のでしょう?」
「違います」
私は売買契約を取りした。
「と建物は、すでに森田産へ5800万円で売却しました。契約も引き渡しも完しています。浩司さんにも子さんにも、取り戻す権利はありません」
「5800万円……」
親戚たちの線が斉に浩司へ向いた。彼はこれまで、あのを「自分が買った戸建て」のように親戚へ話していたらしい。正志の隣に座っていた従兄が、呆れた声で尋ねた。
「浩司、お、正に『宅ローンもあとしだ』と言ってなかったか?」
「それは、その……夫婦のなんだから、同じようなものだろ」
「妻の相続財産を、自分が買っただと自していたのか」
正志の声から、最初の威圧が消えていた。
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浩司は額に汗を浮かべながら、私を指差した。
「だが、由美子はあのを俺に贈与すると約束した。署名した類もある。売却したほうが契約違反なんだ」
「私が署名した類ですか?」
「そうだ。おが忘れているだけだ」
浩司は勝ち筋を見つけたように声をめた。
私はクリアファイルから、司法士事務所の確認と、浩司が提した委任状の写しを取りした。
「では次に、この署名を誰がいたのか確認しましょう」
第10話 机に並べた証拠
私が偽造された委任状を机へ置くと、浩司の顔から血の気が引いた。
「こちらは、浩司さんが司法士へ持ち込んだ所権移転の類です。私がを無償で贈与し、すべての続きを夫へ任せるとかれています」
正志が類をに取り、署名欄へ目を凝らした。
「由美子さんの名があるじゃないか」
「私の字ではありません。そのろを見てください」
私は何度も名を練習したきと、司法士が作成した面談記録を差しした。本確認の話で私が贈与を否定したため、続きは止されている。
「浩司さんは実印を持ちすつもりでした。しかし、子さんの箪笥から私が先に取り戻したため、申請できなかったのです」
「母さん、実印を預かっていたのか?」
親戚のが尋ねると、子は唇を震わせた。
「預かっていただけよ。
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由美子さんは昔から物の管理ができないから」
「その印鑑で、本に黙っての名義を変えようとしたのか」
「私は浩司に言われただけで……」
子は息子へ責任を押しつけた。浩司は子を蹴るようにちがった。
「まだ提していないんだから、犯罪じゃないだろ。夫婦のでし類を準備しただけだ!」
「では、を奪うもなかったと?」
私はスマートフォンを机の央へ置き、録音を再した。
『俺にはあのが必なんだ。優のお腹には子どもがいる。あのを世帯宅にして、母さんと3で暮らすって約束したんだよ』
会議が静まり返った。
続いて、浩司自の声が流れた。
『名義を俺に変えてくれたら、婚には応じてやる。おも政婦としてなら置いてやるから』
再が終わっても、誰もすぐにはをかなかった。
「妄ではありません。の名は川優、31歳。浩司さんの勤務先で働く派遣社員です。現妊娠5かで、2は私を追いしたあと、あので子さんと暮らす予定でした」
私はマタニティプランへ変更された旅予約、リフォーム図面、優から届いたメッセージを並べた。
『いつまで奥さんのつもりですか?』
『を返してください。あれはのです』
画面を見た正志のが震え始めた。
「リフォーム会社の担当者からも確認をいただいています」
私は図面のから、会社印のある枚の面をした。打ちわせの依頼者は子。入居予定者は浩司、子、優とその子ども。