"留守番を命じられた妻" 第4話
最の線の横には、父の字で「由美子、18歳」とかれていた。
私は盆を持つに力が入るのをじたが、表にはさなかった。ずつ、静かにお茶を置いていく。
優のへ湯みを置いた、彼女が私を見げた。
「今までこのを守ってくださって、ありがとうございました」
謝の形をした、確な追放宣言だった。
「浩司さんから聞きました。奥様も、もう自由になりたいっておっしゃっているそうですね。私たちも赤ちゃんがまれるに落ち着きたいので、なるべくくお願いできると助かります」
私は優の顔を見つめた。彼女は、自分が何をしているのか理解したうえでここに来ている。騙されただけの無な女性ではない。のと夫を奪い、その妻に笑顔で退を迫っているのだ。
「そうですか」
私がそれだけ答えると、子は苛ったようにを鳴らした。
「由美子さん、あなたの役目はもう終わったのよ。子どもも産めないのに、いつまでもの嫁の座にしがみつかれても困るでしょう」
浩司とのに子どもを授からなかったことを、子は何度も私の責任にしてきた。その傷を、今度は若い妊婦ので見せ物にしたかったのだろう。
けれど、私はもう傷つかなかった。
彼女たちはらない。浩司の族カードが数に止まることも、このの売却契約がすでにんでいることも、私の元に180万円を超える正利用の記録があることも。
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営業担当者は気まずそうに咳払いし、図面を閉じた。
「事内容については承しました。ただ、正式なお見積もりと契約には、現の所者ご本の同が必です。登記の名義は、どなたでしょうか」
「今はこのよ」
子は私を顎で示したあと、得げに続けた。
「でも今、息子が名義を変更する続きをしているわ。由美子の実印も必な類も、全部こちらで預かっているから問題ありません」
「ご本の確認も必になりますが……」
「族のことなの。余計な配はしなくて結構よ」
子は勝ち誇った顔でお茶をんだ。
私は何も言わず、空になった盆を胸ので抱えた。
15、子は「若い嫁に管理は無理」と言って、父が成祝いに作ってくれた私の実印を取りげた。それ以来、自分の箪笥の奥に隠し、私がすら忘れているとい込んでいる。
しかし、その実印は今、私のエプロンのポケットに入っていた。
第5話 消えた実印
私が実印を取り戻したのは、優がへ来る2だった。
子が形科へかけたあと、私は彼女のに入り、箪笥の引きしを段ずつ確かめた。着物、宝箱、古いアルバム。いちばんの奥に、見覚えのある桐箱が隠されていた。
蓋をけると、父が成祝いに作ってくれた実印と印鑑登録証が並んでいた。
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15ぶりに自分の名が刻まれた印面を見た瞬、ようやく自分自を取り戻したような気がした。
私は代わりに、形の似たい認印を桐箱へ入れておいた。子がを確認したとしても、朱肉をつけるまでは気づかないだろう。
そのの夕方、見らぬ司法士事務所から話がかかってきた。
「由美子様ご本でしょうか。ご主から依頼を受けている、贈与による所権移転について確認したいことがございます」
予していたとはいえ、実際に聞くと背筋がえた。
浩司は、私から自分へを贈与するという類を司法士へ持ち込んでいた。そこには私の署名らしき文字があり、「夫にすべて任せます」とかれた委任状まで添えられていたという。
「私はを贈与するつもりはありません。その類にも署名していません」
話の向こうで、司法士が息を止めたのが分かった。
「では、続きは直ちに止します。のため、直接お会いして確認させていただけますか」
翌、私は司法士事務所を訪れた。見せられた申請には、確かに私の名がかれていたが、文字の癖は似ているだけで、私の跡ではない。浩司は何度も練習したのか、失敗した署名が残るきまで緒に提していた。
ただし、実印と印鑑証が揃っていなかったため、登記申請にはめなかったという。