"留守番を命じられた妻" 第2話
朝は子の好みにわせ、洗濯物は彼女の指定した畳み方で揃えた。パートから帰れば夕を作り、町内会の用事を代わりにこなし、通院にも付き添った。
私が夕を作り終えるに、子と浩司だけでべ始めることも珍しくなかった。洗濯物を畳んで卓へ戻る頃には、鍋の底に量の噌汁が残されているだけだった。
「1分を温め直すなんて、ガス代がもったいないわ。そのままみなさい」
子はテレビを見たまま言い、浩司は何も聞こえなかったようにスマートフォンを眺めていた。
えた噌汁をみ込むたび、胸の奥までたくなった。それでも私が耐えたのは、族という形を壊したくなかったからだ。父のに毎晩かりがともり、誰かの声が聞こえている。それがを守ることだとい込んでいた。
私の目を覚ましたのは、半の来事だった。
パートから帰ると、庭の隅にあった盆栽棚が壊され、黒いごみ袋へ詰め込まれていた。父がくなる直まで入れしていたさな松も、鉢ごと割られている。
「どうして勝に捨てたんですか」
縁側でお茶をんでいた子は、悪びれもせず肩をすくめた。
「汚らしいからよ。今度リフォームするなら、庭も全部つぶして駐にしたほうがいいわ」
「リフォーム?」
「古いなんだから、いつかは必でしょう。
広告
いちいち言葉尻を捕まえないで」
子はちがり、私を押しのけるようにしてのへ戻った。
私はに膝をつき、ごみ袋へ両を入れた。割れた鉢と湿ったの底からてきたのが、父の剪定鋏だった。
錆びた鋏を握った瞬、自分がを守っていたのではないと気づいた。父とのいが踏みにじられるのを黙って見ていただけだった。
そのから、私はを切りして2を観察するようになった。
すると、それまで見えなかったものが次々と浮かびがってきた。浩司は週末になると帰宅が遅くなり、浴までスマートフォンを持ち込むようになった。子は私が部へ入ると話を切り、聞のへ宅会社のカタログを隠した。
ある夜、浩司が入浴しているに、脱所へ投げされたスーツのポケットからレシートが落ちた。
「おい、何してるんだ」
浴の扉が勢いよくき、浩司が濡れた髪のままびしてきた。彼は私のからズボンを奪い、血相を変えてポケットのを確かめた。
「も着るから、しわにならないよう自分で掛けようとっただけだ」
結婚して15、浩司が自分でスーツを掛けたことなど度もない。
「そう。気を使わせてごめんなさい」
私は何も気づいていないふりをして脱所をた。レシートそのものはポケットへ戻したが、商品名は読むことができた。
広告
購入所は、浩司の会社から2駅れたショッピングモール。商品はノンカフェイン料と、妊婦向けの葉酸サプリだった。
55歳の夫が、自分のために買うものではない。
第3話 見らぬ3目
葉酸サプリのレシートを見つけてから、子の言はさらに分かりやすくなった。
あるの午、予定よりく帰宅すると、リビングから弾んだ声が聞こえてきた。
「男の子でも女の子でも、元気ならどちらでもいいわ。ベビーベッドは私の部の隣に置けるし、あのには頃いを見てていってもらうから」
子は私が扉をけた途端、話を切った。
「帰ってくるなら、音くらいてなさいよ」
彼女はテーブルのにあった冊子を、慌てて聞のへ押し込んだ。表には宅会社の名と、「世帯リフォーム相談会」の文字があった。
妊婦向けのサプリ、ベビーベッド、世帯宅。そして「あのにはていってもらう」という言葉。
点と点は、もう線になっていた。
それでも私は浩司を問い詰めなかった。言い逃れのできない証拠が揃うまで、らないふりを続けることにした。
決定なものが届いたのは、温泉旅の2週だった。
夜、パソコンでメールを確認していると、旅館の予約システムから「ご宿泊者報が変更されました」という通が届いていた。
予約したのは私であり、連絡先も決済用カードも私名義のままだったため、浩司が変更した内容が自に私へ送られてきたのだ。