"留守番を命じられた妻" 第1話
第1話 「が狭いから」
「が狭いから、あなたは留守番ね。族入らずで楽しんでくるわ」
のたいが吹く曜の朝、義母の子は玄関先でそう言った。
私の元には、昨夜から用していたさな旅鞄がある。今は子の寿祝いを兼ねた2泊3の温泉旅で、宿泊費だけでも32万円。旅館を探し、予約し、代を用したのはすべて私だった。
それなのに、発の5分になって、私は突然「留守番」を命じられた。
「でも、予約は3分でしょう?」
私が尋ねると、夫の浩司はのキーを指先でもてあそびながら目をそらした。
「母さんの荷物がいんだよ。無理に乗ったら窮屈だろ」
「それに、嫁が緒だと私も気を使うの。あなたもでゆっくりできるんだから、そのほうがいいでしょう?」
子は元だけで笑った。助席の元には彼女のきなボストンバッグがあり、部座席には見覚えのない淡いベージュの旅鞄が置かれていた。
あの鞄の持ち主を、私はすでにっている。
「分かりました。では、お言葉に甘えて留守番させてもらいます」
私が微笑むと、浩司はあからさまに堵した。
「悪いな。産は買ってくるから」
子は勝ち誇った顔で助席に乗り込み、窓をけた。
「蔵庫の、帰るまでに片づけておいてね。それから私の部の着物、湿気が配だから度干ししておいて」
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「はい。お気をつけて」
私は玄関先にち、角を曲がってが見えなくなるまでを振った。
泣き叫ぶ必はなかった。にすがりついて、連れていってほしいと頼む理由もない。
3、あの2がこのへ戻れないことをっているのは、今のところ私だけだった。
玄関の扉を閉めると、のに静寂が戻った。リビングのテーブルには、2がべ散らかした朝の皿と、み残したたいお茶が置かれている。
私は器を流しへ運び、いつものように枚ずつ洗った。これが、このでする最の事になる。
築43のこのは、だった父が自分ので建てたものだ。父がくなったあと、浩司と子が転がり込むように同居を始め、それから15、2はいつのにか自分たちがの持ち主であるかのように振るってきた。
けれど、も建物も父から相続した私だけの財産だ。登記簿のどこを探しても、浩司や子の名はない。
器を洗い終えると、私は寝のクローゼットから黒い耐庫を取りした。には登記事項証、相続関係の類、数冊の通帳、そして父が使っていた古い剪定鋏が入っている。
を落とし、く油を塗った鋏をに取ると、錆びた柄の触が掌に伝わった。
「お父さん、今で終わらせるね」
を守ることと、こので耐え続けることは違う。
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それに気づくまで、私は15もかかってしまった。
類を鞄に収めたところで、壁の計が8を告げた。私はスマートフォンを取りし、登録しておいた番号へ話をかける。
呼びし音は1度で途切れた。
「由美子ちゃん、発したか?」
父の古くからの友で、元の産会社を経営する森田修さんの声だった。
「はい。今、ました」
「本当に予定どおりめていいんだな。残っている具も、全部処分で」
私は振り返り、子の価な箪笥と、浩司が自していた革張りのソファを見た。
「構いません。私のものは、もう分けてあります」
「分かった。鍵と処分業者を連れて、3にく」
「お願いします」
私は通話を切るに、はっきりと付け加えた。
「このに、あの2を度と戻すつもりはありません」
第2話 たい噌汁
父がくなったのは、私が35歳のだった。
母をくにくした私は、だった父と2で暮らしてきた。廊の板も、庭に面した縁側も、リビング央の太い柱も、すべて父が選び、自分ので仕げたものだった。
「このは由美子のだ。誰かに慮しないで、自分の好きなようにきろ」
父はよくそう言って笑った。
ところが父のから数、義父をくした子が「男夫婦と暮らすのは当然」と量の荷物を持って引っ越してきた。そのから、父のはしずつ子のへと変わっていった。
「男の嫁なんだから、親の面倒を見るのは当たりでしょう」