"二十七年目の嘘" 第13話
賑やかで、慌ただしくて、けれど温かかった々。
その々のすべてが偽りだったわけではない。
美智子は靴を脱ぎ、居へがった。
仏壇のにき、線を本向けた。
遺のの也は、いつものように穏やかな、し困ったような笑顔を浮かべている。
美智子は座布団に座り、遺を見つめた。
「也さん」
静まり返ったのに、美智子の声が落ちた。
「今ね、あなたの会社の式典の内覧会にってきたのよ。野さんにも、藤本さんにもお会いしたわ」
写真の也は、何も答えない。
「るとった? 恥をかかせに来たとったかしら。……あなたの名は消さなかったわよ。私の名を、横に並べて置いてもらっただけ」
美智子はさく息を吐いた。
「あなたのことを許したわけじゃないわ。、勝に話を切ったこと。私のノートを自分の柄にしたこと。ぬまで言も謝ってくれなかったこと。全部、ずるいとうし、勝だとう」
仏壇の蝋燭の炎が、かすかに揺れた。
「でもね、むのもやめることにしたの。あなたのせいで私のが奪われたってい続けるのは、結局、私のこれからのまであなたに預けることになっちゃうから」
美智子はちがり、斎へ向かった。
机のには、あのの「採用内定通」が置かれていた。
広告
「6/17 辞退連絡済」とかれた、茶い封筒。
美智子はそれをに取った。
破いて捨ててしまおうかともった。
燃やしてしまおうかともった。
けれど、美智子はそれを捨てなかった。
引きしの奥から、写真てをつ持ってきた。
に入っていた夫の単赴任代の写真を抜き、代わりに民センターの写真展の案内ハガキを入れた。
『ただいまの所 佐伯美智子』と印刷されたハガキだ。
そして、その写真ての裏側に、あの採用内定通を丁寧に折りたたんで挟み込んだ。
憎しみの証拠としてではなく。
自分が歳のとき、確かに自分の力で京の切符を掴み取ったのだという、消えない誇りの証として。
そして、選ばなかったもうひとつのの標識として。
美智子は机ののニコンのカメラを持ちげた。
ずしりとした属のみが、のひらによく馴染んだ。
カーテンをけると、庭の向こうにの夜空が広がっていた。
満にいが、根や庭をく照らしている。
美智子はカメラを構え、ファインダーを覗いた。
角い枠の向こうに、に照らされた庭の敷と、自分が脱ぎ捨てた古いサンダルが写り込んだ。
息を止め、ピントをわせる。
カシャリ。
静まり返った夜ののに、乾いたシャッターの音が響いた。
それは、誰かのの背景ではなく、佐伯美智子としてのしいが始まる図のようだった。
広告
サイト掲載用タイトル
夫が急した翌、斎の奥から見つかった「私の採用内定通」――27、専業主婦としてきてきた妻がった“夫の嘘”
サイト用あらすじ(216文字)
58歳で急した夫の遺品を理していた美智子は、引きしの奥から27の「採用内定通」を見つける。それは当、格だったと諦めていた京の版社からのものだった。封筒の裏には、几帳面な夫の文字で「辞退連絡済」。族のために尽くし、良き妻としてきてきた27の記憶が音をてて崩れ始める。夫はなぜ私のを勝に奪ったのか。そして、夫が残したファイルには、さらに信じがたい真実が眠っていた。
Threads用タイトル
夫の遺品理で見つけた、27の「私の内定通」。
Threads用導入文
夫が58歳で急した。
葬儀の翌、 遺品を理していた私は、 斎のいちばんの引きしから 通の茶封筒を見つけた。
に入っていたのは、 27の「採用内定通」。
それは当、 歳の娘を育てながら挑戦し、 「落ちた」と諦めていた京の会社からのものだった。
封筒の裏には、 夫の几帳面な文字が残されていた。
「6/17 辞退連絡済」
夫はあの、 私に言の相談もなく、 私の名で内定を断っていた。
なぜ夫は、私のを勝に決めたのか。
そして引きしの底から、 夫が会社で世を果たした 「ある伝説の企画」
がてくる。