"「中卒は留守番してろ」と空港に置き去りにされた私――数時間後、高級旅館の女将が上司だけを追い返した" 第2話
第2話 半待ちの宿から届いた返事
「本気で祥館へ連絡するつもりか」
会議、内はを押すように澪へ尋ねた。
「はい。ただ宿泊をお願いするのではなく、陸商品の共同企画として提案します」
「断られたら、おの責任だからな」
「承しています」
内が欲しいのは成功ではなく、澪の失敗だった。事を理解したうえで、澪はそののうちに企画の作成を始めた。
祥館が無制限に団体客を受け入れない理由も、広告目の取材を好まない理由もっている。宿の静けさを守りながら、季節ごとの料理と域文化を正しく伝える商品でなければ、察を受けるがない。
澪は客を量販売する企画を捨て、12組限定の滞型商品を提案した。元のや茶舗にも利益が残るよう、移と体験の流れを組み直す。翌朝までに20ページの企画を完成させ、会社の正式な窓から祥館の営業担当へ送信した。
その夜、澪は自宅のベランダで、連絡先に登録された「母」の文字を見つめていた。
話をかけると、数回の呼音のあと、落ち着いた声が聞こえた。
「企画なら届いています」
「もう読んだの?」
「最初の5ページだけね。残りは支配と営業責任者に回しました」
祥館の女将、野冴子。澪の母親だった。
祥館は冴子の実が代々営んできた旅館で、くなった父の龍は料理を務めていた。
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澪も15歳から7、洗い、清掃、配膳、予約管理と、旅館のほぼすべての持ちを経験している。
父がくなった、澪はへ学せず、祥館で働くを選んだ。冴子は反対もせず、「自分で選んだなら、途で投げさないこと」とだけ言った。
その言葉を、澪は今も忘れていない。
「族だから受けるのはやめてね」
「そのつもりです。あなたが野澪だということは伏せて、企画の内容だけで判断させます」
「ありがとう」
「ただし、受けるはあなたが察責任者として同すること。提案した本が説できない企画なら、こちらもを使うがありません」
「分かっています」
話を切る直、冴子がく尋ねた。
「会社では、きちんとやれているの」
澪は瞬だけ迷ったが、「うん」と答えた。
父の葬儀でも涙を見せず、娘が学を諦めても引き止めなかった母に、職で受けている屈辱を話す気にはなれなかった。
3、祥館から正式な回答が届いた。
企画内容を評価し、旅会社向けのモニター察として10を受け入れる。費用は通常料からの値引きではなく、料理や接客内容の報告提を条件とする正式な業界察料。承諾には、察責任者として野澪の氏名が記載されていた。
澪は条件を確認し、署名済みの類を共サーバーへ保してから、部署全員へ結果を伝えた。
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「祥館から、受入承諾をいただきました」
瞬の静寂のあと、内がきくどよめいた。
「本当に、あの祥館?」
「察すら断られるところでしょう。どうやって取ったの?」
「企画を審査していただきました。当は料理と接客の説に加えて、今の商品造成についても見交換をいます」
篠原が澪の肩を軽く叩いた。
「すごいよ。内部が何も取れなかったのに」
「余計なことを言うな」
内の声で、笑い声が止まった。
ちょうどその、いたドアのを営業部が通りかかった。
「内さん、祥館の察が決まったそうですね。ずいぶんく交渉していましたが、に先を越されるとはいませんでしたよ」
悪気を隠そうともしない笑みを残し、営業部はっていった。
内は何も答えなかった。ただ、澪が作った承諾をに取り、察責任者の欄をい見つめていた。
このまま研修が成功すれば、祥館との商品企画を実現させたのは澪になる。自分が奪うはずだった評価を、卒のがにすることになる。
内は承諾を机に置くと、穏やかな声で言った。
「航空券の配は本に任せる。野は現の準備に集しろ」
「承しました」
澪が自席へ戻ったあと、内は廊へた。しを置いてから、航空券を担当する本悠斗の社内チャットへいメッセージを送った。
――仕事が終わったら、会議へ来い。