みかん小説
本棚

"仕送り10万円の行方" 第3話

丈夫だろう」と勝に決めつけ、何も父の暮らしを確かめようとしていなかった。

義両親の結婚記には、武志と相談して温泉旅を贈った。

2泊3い旅だったが、義父はびしてくれた。義母も珍しく素直に「ありがとう」と言った。

ところが旅から戻った義父は、私を呼び止めた。

「美幸さん、お父さんとは仲が悪いのか?」

「いいえ。どうしてですか?」

「広美から、仕送りもしていないと聞いたからな」

私は瞬、義母を見た。

また余計なことを。

そうったが、義父は責めるつもりではなかった。

暮らしなら、し助けてあげてもいいんじゃないか」

「でも、今はに10万円入れているので……」

「それを減らせばいい」

義父はすぐに答えた。

「美幸さんが入れている10万円を、そのままお父さんへ送りなさい。武志の10万円と私の収入があれば、このは困らない」

武志も反対しなかった。

義母だけが満そうだった。

活費が減るじゃない」

「じゃあおも働けばいい」

義父が言返すと、義母は黙った。

こうして翌から、私の10万円は父への仕送りになることが決まった。

問題は振込先だった。

父に直接、

座を教えて」

と聞けばよかった。

しかし何もろくに活を気にかけなかった娘が、急に仕送りをすると言うのが何となく気恥ずかしかった。

そこで姉の由利に連絡した。

広告

私より数歳の姉だが、昔から仲は良くない。

由利は卒業も定職に就かず、30歳を過ぎた今もカラオケなどでアルバイトをしている。実には頻繁に入りしていたため、父の座もっているとった。

「お父さんに毎10万円送ろうとってるの」

『へえ。美幸が?』

話の向こうで、馬鹿にしたような笑い声がした。

座番号、分かる?」

『私がお父さんに聞いてあげるわよ』

、由利から名と座番号が送られてきた。

私は何の疑いもなく登録した。

それから毎1

10万円を振り込んだ。

父からお礼の連絡はなかった。

けれど、父はそういうだ。

照れくさくて何も言わないのだろう。

私は勝に納得していた。

そんな活がしばらく続いたある

仕事帰り、駅くで武志を見かけた。

声をかけようとして、私はを止めた。

隣に由利がいたからだ。

「もう帰っちゃうの? 武志さん」

姉は笑いながら武志の肩にを置いた。

私は胸の奥がたくなった。

由利は昔から、自分の方が美だ、私は落ちこぼれだと平気で言うだった。

の恋にちょっかいをしたこともある。

「お姉ちゃん」

声をかけると、2が同に振り返った。

武志の顔が引きつった。

「あ、美幸」

「何してるの?」

「偶然会っただけだよ」

由利も同じことを言った。

「そうよ。たまたまよ」

私は疑ったが、その刻を確認すると武志は仕事を終えたばかりだった。

広告

会社からここまでのを考えても、緒にいたとはえない。

最終に私は謝った。

それでも、つだけに残る言葉があった。

――もう帰っちゃうの?

偶然会っただけなら、どうして由利はそんな言い方をしたのだろう。

それから仕事が急激に忙しくなった。

規模な商業施設の建設が始まり、塗料会社に勤める私の残業も増えた。

ある休、義母が珍しくコーヒーを持って部へ来た。

「随分疲れてるみたいね」

し仕事がて込んでいて」

「次の連休、実に帰ってきたら?」

な提案だった。

義父と義母はバス旅るという。

「武志も緒に連れてきなさいよ。ゆっくりしてくればいいじゃない」

武志にも異論はなく、私たちは結婚初めて2で実へ泊まりにくことになった。

父に直接会うのは久しぶりだった。

玄関をけた父は、私たちを見るなり目を丸くした。

「美幸? どうしたんだ急に」

「たまには帰ってこいって言われたの」

父は嬉しそうにへ入れてくれた。

リビングのテーブルには、べかけの茶碗がつ。

はお茶漬けだった。

翌朝。

を作ろうと蔵庫をけ、私は異変に気づいた。

何も入っていない。

「お父さん、普段何べてるの?」

「まあ、お茶漬けかな」

「昨もそうだったじゃない」

だと簡単なものでいいんだよ」

あまりにも痩せた父を見て、さすがに腹がった。

「毎お茶漬けなんて体に悪いわよ」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: