"消えた神童、10年後の手紙" 第10話
しかし宛先で戻ってきた。
もう1度送った。
また戻った。
そのの、ゆみ子はを引き払い、隣町の県営宅へ移っていた。
話も以からされていた。
ほんの数かのすれ違いだった。
節子は陸へ説した。
「お母さんは病気で、迎えに来られない」
「もうしばらくここにいよう」
陸は頷いた。
平成1512。
節子は交通事故でくなった。
陸は12歳だった。
残されたハンスは、本で起きた事をほとんどらなかった。
本側の親戚の連絡先も分からない。
そのまま陸を育てた。
陸はドイツの学へ通った。
ドイツ語を覚え、本語はしずつれていった。
サッカーは続けた。
20歳になる頃には元の部リーグのクラブへ登録し、平はで働きながら週末にボールを蹴っていた。
平成22の暮れ。
の物置を片づけていた陸は、節子の遺品箱の底から古い封筒を見つけた。
には団の集写真の切れ端。
裏には丸い字で「陸 8歳」。
そして本の所がかれた古い。
陸は、その文字を見た。
父の字だった。
なぜか覚えていた。
陸は本語の辞典を買った。
文章をくのに4かかかった。
何度も単語を調べた。
漢字を諦め、ひらがなやローマ字を混ぜた。
そうして、あの航空便をいた。
「私の名は陸です」
「はは、きていますか」
7の終わり。
ゆみ子の部にはしく話が引かれた。
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89、午8。
話が鳴った。
ゆみ子は受話器を取った。
通訳がに入っていた。
しかし最初に聞こえたのは、若い男の声だった。
「お母さん」
ゆみ子は受話器を両で持った。
「元気ですか」
「うん」
「僕、元気です」
「うん」
それしか言えなかった。
2とも。
同じ言葉を繰り返した。
通訳が途で何かを言おうとして、やめた。
5分ほど、まともな会話にならなかった。
それでも話は切らなかった。
声がそこにある。
それだけでよかった。
平成231016。
曜。
午1040分。
空港の到着ロビーで、自ドアがいた。
背のい青がてきた。
180センチくあった。
髪はく、細で、きなスポーツバッグを肩にかけていた。
ゆみ子は、顔を見てもすぐには分からなかった。
10歳だったは20歳になっている。
頬も。
目元も。
肩の形も違っていた。
だが歩き始めた瞬、分かった。
の運びだった。
昔、のグラウンドを荷物を担いで歩いていたと同じだった。
陸は母を見つけるとを止めた。
づき、バッグをへ置いた。
度く息を吸った。
そして覚えてきた本語を、ゆっくり並べた。
「お母さん」
ゆみ子は目をさなかった。
「麦茶、まだありますか」
ゆみ子は返事ができなかった。
ただ何度も頷いた。
頷きながら、両で息子の腕を掴んだ。
10の細い腕ではなかった。
周囲のが振り返った。
誰も事はらなかった。
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翌の昼過ぎ。
ゆみ子と陸は桂町へ向かった。
商を歩いた。
10よりシャッターは増えていた。
板のも褪せ、建物のいくつかはなくなっていた。
それでも気はまだあった。
先にいた野は、陸を見てしばらく声がなかった。
目のの青と、10にグラウンドをり回っていたを何度も見比べた。
やがてのへてきた。
陸の両を握った。
「きなったな」
陸は、その本語だけは分かった。
さく笑った。
夕方。
2はへった。
造成の事は終わり、しいが通っていた。
剛が埋められていた所には、簡素ない柵が置かれていた。
陸はそこでいっていた。
何も言わなかった。
10。
父は陸を駅まで送った。
夜の列に乗せた。
節子が別の駅で待っていた。
別れ際、剛は息子へ言った。
「お母さんには、まだ言うな」
「父さんが必ず迎えにく」
「それまで向こうで待っとれ」
陸は、その約束をずっと信じていた。
ドイツへ渡ったも。
半経ったも。
1経ったも。
母が病気だから迎えに来られないと言われたも。
父から連絡がない理由を、自分なりに考え続けていた。
その父が、陸を送りした数に命を奪われていたことを、20歳になるまでらなかった。
その夜。
県営宅へ戻ると、陸はスポーツバッグの底から布の袋をした。
に入っていたのは、古いスパイクだった。
革には細かなひびが入り、靴底のポイントは擦れて丸くなっている。