"消えた妻と13本のテープ" 第10話
ではなく、娘をいながら助けを求めた母親として、ようやく故郷へ帰ることができた。
になると、栞は母親の墓への指輪を持っていく。
104。
かつて母が同窓会へ向かったであり、川井が13、ラジオへはがきを送り続けただった。
墓で栞は、同じ謡曲をさく流した。
戻ってきてほしいと願うではない。
母親がもう帰ってきたことを、自分自へ確かめるためだった。
千鶴の遺骨を墓へ納めてから、さらにが過ぎた。
の終わり、栞のもとへ通の封が届いた。差の欄には、母が消えた夜の同窓会で幹事を務めていた倉美代子の名があった。
封筒のには、いと枚の案内状が入っていた。
《あの夜からになります。今度こそ千鶴さんも緒に、もう度みんなで集まりたいとっています》
栞は、その文章を何度も読み返した。
母の真相がらかになってから、同級たちは次々に謝罪へ訪れた。武夫が会くにいたことに気づきながら黙っていた者。夫婦の問題へ巻き込まれたくないと考え、警察へ曖昧な証言をした者。元担任の川井から何からないかと尋ねられたのに、面倒を恐れて話を切った者もいた。
彼らのくは、自分が母を殺したわけではないと言った。
その言葉は違っていない。
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千鶴の首を折り、たい池へ沈めたのは武夫だった。
けれど、母をも暗いの底へ置きりにしたものは、の暴力だけではなかった。見て見ぬふりをした目。にしかけた言葉をのみ込んだ喉。自分には関係ないと閉じられた扉。そのつつが、母へ届くはずだったを遮っていた。
栞はい、同窓会へ参加するか迷った。
最には、古いカセットテープを本だけ鞄へ入れ、会となる温泉旅館へ向かった。
と同じ建物だった。
壁は塗り直され、玄関にはしい自ドアがついていた。それでも、廊へ歩入った瞬、栞は胸の奥をく掴まれたようにじた。
ここを母も歩いた。
受付で名をき、久しぶりに会う同級へ笑いかけた。では父の嫌を損ねないよう息を潜めていた母が、ほんの数だけ、松本千鶴ではなく旧姓の千鶴へ戻った所だった。
宴会にはほどが集まっていた。
栞が入ると、話し声が止まった。
誰もが母と同じだけを取っている。髪の増えた者、鏡をかけた者、病気で杖をついている者もいた。壁際の席には、母のために脚だけ空の子が用され、そのに若い頃の写真といが置かれていた。
写真のの千鶴は歳だった。
辺で髪を押さえながら笑っている。
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栞がっている母よりもずっと若く、まだ妻でも母でもない、の女の顔をしていた。
「来てくれてありがとう」
美代子がくをげた。
栞はさく頷いたが、「丈夫です」とは言わなかった。
丈夫ではなかった。
母が消えた夜から、何もらずに過ごしたも、真実をってからのも、丈夫だったはもなかった。だから、相をさせるためだけの言葉を使うのはやめようと決めていた。
事が始まっても、会はかった。
やがての男性がちがった。母と学代に同じ美術部だったという藤原だった。
「千鶴さんが旅館をる、俺に言ったんです」
藤原は膝ので拳を握り締めていた。
「これから娘を連れてをる、と。もう夫の顔を見て暮らすのはやめるって」
栞は顔をげた。
初めて聞く言葉だった。
「どうして、それを警察へ話さなかったんですか」
声は自分でも驚くほど静かだった。
藤原は唇を震わせた。
「武夫さんから話が来たからです。千鶴は精神に定で、を計画していたようだと言われました。夫婦の話をへ言いふらせば、千鶴さんの評判を傷つけることになる、と」
「それを信じたんですか」
「信じたというより……信じたことにしました」
藤原は俯いた。
「警察へ何度も呼ばれるのが嫌だった。
自分の妻にも、同窓会で千鶴さんとで話したことを誤解されたくなかった。だから何もらないと言いました」
別の女性もちがった。