"消えた妻と13本のテープ" 第5話
警察は川井の1997104のを調べた。
古いJAバンクの記録を確認すると、午710分、川井の座から現が引きされていた。ATMは千鶴が話をかけた公衆話から、歩いて7分ほどの所にある。
川井は失踪当、確実に町にいた。
さらに、空きとなっていた川井の自宅を調べると、押し入れの奥から製の箱が見つかった。
には千鶴からのが保管されていた。最も古いものは学を卒業した直のもので、最は結婚から4の1992にかれている。
《先へ。武夫さんは、結婚すれば変わると言っています》
《私が悪いかららせてしまうのかもしれません》
《栞がいるので、をることはできません》
《先にだけは、本当のことをけます》
の内容から、武夫が結婚、千鶴のを細かく制限していたことが分かった。友との交流を嫌い、実へ帰ることにも嫌になり、千鶴がすると帰宅を確認した。
直接な暴力を示す記述はなかった。しかし、千鶴が夫を恐れていたことはらかだった。
学の古い指導記録にも、川井の跡が残されていた。
《庭環境が厳しく、内向だが優しい児童。の顔を見てする傾向がある。卒業も見守りが必》
川井は、千鶴が子どもの頃から、自分の苦しみをにできない性格だとっていた。
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だからこそ彼女は、同窓会の夜、元担任へ助けを求めた能性がかった。
では、なぜ川井は13も黙っていたのか。
警察はテープの音声を専関へ送り、背景音を分析した。
ラジオの音声の裏に、窓を揺らすの音と、非常にい音が混じっていた。流れる川ではなく、淀んだか、極めてゆっくりく面の音だった。
川井のの裏にはがあり、その麓には農業用のため池があった。の窓からも、々の隙に面が見える。
13、川井はあのため池を見ながら、千鶴へ語りかけていたのではないか。
警察は13本の音声を1語ずつき起こし、系列に並べた。
断片な独り言は、次第に1つの夜の来事を形作っていった。
千鶴は同窓会の途で席を抜け、川井とくの喫茶で会っていた。
夫が怖いこと。
をたいが、娘を置いていけないこと。
武夫が最、誰かから届いた同窓会の案内を見てから、異常なほどを監するようになったこと。
そしてその喫茶の向かいの暗いで、武夫が千鶴を待っていた。
川井は、それを見ていた。
警察は、1997の捜査資料を最初から洗い直した。
最もなのは、武夫のアリバイだった。
当、武夫は午7頃から午10半頃まで、物の常連客2と居酒にいたと証言している。同者2も同じ話をし、員の記憶とも致したため、警察はアリバイがあると判断した。
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しかし13が過ぎた今、同者のうち1はすでにくなり、もう1は70代になっていた。
刑事が再び話を聞くと、男性は最初、当の証言を繰り返した。
「武夫さんとは夕方からんでいました。違いありません」
「川井茂雄さんが、武夫さんを午7過ぎに町ので見たという録音を残しています」
刑事が告げると、男性の表が変わった。
「13のことです。記憶が曖昧になっているだけではありませんか」
「あなたは当、何にへ入りましたか?」
「7頃です」
「武夫さんも緒に?」
男性は答えなかった。
捜査員は当のの伝票や会計記録を探したが、すでに処分されていた。も5に閉している。
それでも男性の沈黙はくなった。
「このままでは、あなたが虚偽の証言で捜査を妨げた能性も調べなければなりません」
刑事が静かに言うと、男性は両で顔を覆った。
「武夫さんがへ来たのは、9を過ぎてからです」
13守られてきたアリバイが崩れた瞬だった。
男性ともう1の常連客は、午7から居酒にいた。武夫が現れたのは午910分頃で、普段より息を切らし、着の袖にがついていたという。
「警察に聞かれたら、最初から緒だったと言ってくれと頼まれました」
「なぜ従ったのですか?」
「奥さんがしただけだと言われたんです。
浮気を疑って追いかけたが見失った、町で騒ぎになると恥ずかしいから助けてほしいと」