"消えた妻と13本のテープ" 第1話
1997104、島根県のあいには、まだの名残が残っていた。田んぼでは収穫を待つ稲がそうにを垂れ、集落のには干した胡麻と唐辛子の匂いが漂っていた。
町からで20分ほどれた集落に、スレート根の古いが並んでいた。その軒で暮らしていたのが、32歳の松本千鶴だった。
夫の武夫は町で物を営み、夫婦には学3の娘・栞がいた。裕福ではなかったが、暮らしに困るほど貧しいわけでもない。から見れば、方の集落によくある平凡な3族だった。
所の々は千鶴を、数のない女性として記憶している。話しかけられれば穏やかに笑うが、自分から輪のへ入ることはなかった。
結婚して9。千鶴は実や学代の友とほとんど連絡を取らなくなっていた。武夫の両親と同居していた期もあり、姑との関係に苦しんでいたという話もあったが、千鶴自が誰かへ詳しく語ることはなかった。
千鶴の世界は、夫の物と自宅、娘の学、所の商のに限られていた。
10の初め、そんな千鶴のもとへ通の案内が届いた。
学代の同窓会がかれるというらせだった。町ので午6から始まり、卒業以来久しぶりに連絡が取れた同級たちが集まるとかれていた。
案内を読んだ千鶴が何をったのか、正確にる者はいない。
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ただし当9歳だった栞は、、母親がそのの朝からし違っていたと話している。
「いつもよりく髪を洗って、何度も鏡を見ていました」
千鶴は箪笥の奥からさな布箱を取りした。に入っていたのは、細いの指輪だった。
結婚指輪ではない。独代から持っていたもので、冠婚葬祭や娘の入学式など、特別なにだけにつけていた。
「お母さん、今きれいにしていくの?」
栞が尋ねると、千鶴はし照れたように笑った。
「昔のお友達に会うからね」
「遅くなる?」
「そんなに遅くならないわ。お父さんと先にべていて」
千鶴は夕の煮物を作り、噌汁の鍋を台所へ残した。午5半、茶いハンドバッグを持ち、いのカーディガンを羽織って玄関にった。
武夫は居で聞を読んでいた。
「夕飯は作ってあります。同窓会が終わったら、最終のバスで帰ります」
「好きにすればいい」
武夫は聞から顔をげなかった。
千鶴は何か言いかけたが、そのままを閉じた。栞のをなで、静かにをていった。
バスへ向かって歩く千鶴のろ姿を、所の女性が見ている。それが集落内で確認された、千鶴の最の姿となった。
当は現で運賃を支払うがく、乗客名簿も残らない。千鶴が本当に町きのバスへ乗ったかどうか、から証することはできなかった。
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午10を過ぎても、千鶴は帰らなかった。
武夫が計を気にし始めたのは、その頃だったという。栞はすでに布団へ入り、母親の帰宅を待ちながら眠っていた。
午0を過ぎても、玄関がく音はしなかった。
それでも武夫は、警察へ連絡しなかった。同窓会の会を確かめることもなく、朝になるまでで待っていた。
翌も、次のも同じだった。
千鶴がをてから3の107。武夫はようやく警察署を訪れ、妻と連絡が取れないと届けた。
「なぜ、もっとくらせなかったのですか?」
担当者に尋ねられると、武夫は落ち着いた声で答えた。
「だとったんです。妻には、昔から忘れられない男がいたようですから」
その言が、捜査の方向をきく変えることになった。
そして3という空のに、千鶴が町へ着いたことを示すはずだった防犯映像は、すでにきされていた。
警察は最初に、千鶴が参加するはずだった同窓会について調べた。
会は町の商にあるさなだった。座敷席が3つしかなく、元の集まりによく利用されているである。
ところが参加者たちの証言は、最初からい違った。
「千鶴さんは来ていました。最初にし話しました」
そう証言した同級が2いる方、別の3は「見ていない」と答えた。主は女性を含む数のグループが座敷を使っていたことは覚えていたが、1ひとりの顔までは確認していなかった。