"12年前も、彼が犯人だった" 第4話
「説してくれ」
「忘れました」
「3週続けて?」
「回収袋へ入れたといます」
「では、誰かが毎週、おが森川さんから受け取っただけを抜いたことになる」
岸本は答えなかった。
川がい声で名を呼んだ。
「岸本」
その言で、岸本の表が初めて崩れた。
「俺じゃないです」
「何が違う?」
「俺、を盗っていません」
「なら、どうしたんだ」
い沈黙の、岸本は観したように言った。
「宮本部に渡しました」
直は聞き違いかとった。
「誰に渡した?」
「営業部の宮本さんです」
フーズには、社ので営業と現管理を統括する部がいる。
宮本彦、56歳。勤続28の古参社員で、川社以に現をっていると言われる物だった。
直にとっては、代から世話になった恩でもある。
「なぜ宮本部へ渡したんだ?」
「曜に会社へ戻ったら、部がいたんです。森川さんの分だけ自分へ渡してくれって言われました」
「3週とも?」
「はい」
「理由は聞いたのか?」
「の配事業の精算方法が変わったから、別に処理するって」
「なぜ経理の浦さんを通さなかった?」
「りませんよ。俺は部に言われたとおりにしただけです」
岸本はを乗りし、必に訴えた。
「本当に盗っていません。俺は会社へ戻ってから、毎回部へ渡しました」
直はすぐには信じられなかった。しかし佐々が最初の聞き取りで話した内容をいした。
広告
曜の午8頃、子錠がき、社員らしい物が事務所へ入った。
それが宮本だったとすれば、岸本の証言と致する。
ただ、さらにきな疑問が残った。
宮本はなぜ、森川キヨのだけを別に受け取っていたのか。
宮本彦は、フーズで最も頼られている物だった。
配送、営業、庫管理、経理補助まで、社内の仕事を通り経験している。社員同士で問題が起きればへ入り、川社が判断に迷ったも、最には宮本の見を求めた。
直自も、入社したばかりの頃に何度も助けられた。
20歳の、配送先を違え、顧客から契約を打ち切ると言われたことがある。顔面蒼になった直を連れ、謝罪へ同してくれたのが宮本だった。
「若いうちは失敗する。次に同じことをしなければいい」
あのの言葉を、直は24経った今も覚えている。
その宮本を疑うことは、佐々や岸本を疑うのとは違った。これまで積みげてきた信頼そのものを、裏返して見る必があったからだ。
川も岸本の話を簡単には信じなかった。
「宮本が、森川さんのを受け取った?」
「岸本はそう証言しています」
「証拠はあるのか?」
「まだありません」
「なら、まず本へ聞こう」
直は止めた。
「し待ってください。佐々さんの、俺たちは裏付けを取るに本へ聞き、そのまま清掃会社へまで話しました」
広告
川の顔がくなった。
「宮本を特別扱いするなというか?」
「逆です。誰に対しても同じ方法を取るべきです。先に確認できる記録を調べましょう」
裏の防犯カメラは故障していたが、子錠の履歴は残っていた。社員が自分のカードで扉をければ、とカード番号が記録される。
総務担当者に依頼して3週分を調べると、曜の午758分、806分、751分に同じカードが使用されていた。
所者は宮本彦。
岸本の証言と、佐々が聞いた子錠の音が致した。
さらに宮本の勤務表では、3とも休になっていた。残業申請も休勤の記録もない。
曜の朝、直は宮本の席を訪ねた。
「部、最の曜、会社へ来ましたか?」
宮本は類から顔をげた。
「たまにな。忘れ物を取りに来たり、残った仕事を片づけたりしている」
「ここ3週、毎週ですよね」
「それがどうした?」
「岸本から、森川さんの現を受け取りましたか?」
宮本のが、瞬止まった。本当にい変化だったが、直は見逃さなかった。
「何の話だ」
「岸本が、部から別処理にすると言われ、森川さんの回収を渡したと話しています」
宮本は子へ背を預けた。
「岸本がそんなことを言っているのか」
「はい」
「らないな」
「では、岸本が嘘をついていると?」
「そうなんじゃないか。瀬、おは若い連の話を簡単に信じるなよ」
その調は昔と変わらなかった。