"2本のさつま芋" 第7話
そのを、正夫は何度も考えた。
決まりを守るが違っているというではない。
決まりを破るが正しいというでもない。
では何なのか。
14歳の正夫には、うまく言葉にできなかった。
母との関係も、すぐに以のようには戻らなかった。
澄子は正夫へ普通に接した。
事も用した。
学へくよう声をかけた。
弟の面倒を見れば礼も言った。
だが正夫は、母が自分を本当はどうっているのか気になった。
っていると言った。
すごくっていると言った。
それでも、追いされることも責め続けられることもなかった。
ある夜、正夫は母の背を見ていた。
澄子は古くなったを縫っていた。
かりので、何度も針へ糸を通している。
正夫は声をかけようとした。
謝るべきなのか。
もう謝ったのだから何も言わない方がいいのか。
結局、何も言えなかった。
澄子も振り返らなかった。
それでも正夫には、その沈黙が以ほど怖くなくなっていた。
母がっていること。
それでも自分を族として見ていること。
その両方が同にすることを、しずつ理解し始めていた。
正しいか違いかだけでは、の気持ちは分けられない。
そのことも、あの来事が教えたもののつだった。
が過ぎた。
正夫はになった。
をて働くようになっても、昭24の数を忘れることはなかった。
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母が警察へ連れてかれた玄関。
妹の泣き声。
自分の袖を引いた弟。
戸棚に残っていた2本のさつま芋。
そして母の言葉。
「決まりを作るは、お腹が空いていないこともあるんだよ」
その言葉だけは、どれだけが過ぎてもの奥から消えなかった。
それから20くが過ぎた。
14歳だった正夫は、方自治体で働く公務員になっていた。
毎向きうのは、類と規則だった。
申請。
基準。
条件。
支援対象。
対象。
仕事を始めたばかりの頃、正夫はそうした仕組みにさえじていた。
決まりがあるから公平に判断できる。
担当者の好き嫌いや気分で、の扱いが変わってはいけない。
誰に対しても同じ基準を使う。
それが政の役割だとっていた。
その考えは、になっても変わっていなかった。
昭24の来事があったからといって、正夫が法律や規則を嫌うようになったわけではない。
むしろ逆だった。
決まりがなければ、声のきい者や力のある者だけが利になる。
だから規則は必だ。
正夫はそう考えていた。
ただつだけ、若い頃とは違うことがあった。
類にかれた条件を見る、その向こうにいるを像するようになった。
ある。
活に困っている母子庭への支援について、職で会議がかれた。
1つの案件が問題になっていた。
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その庭は活に困っている。
支援が必な状況であることを否定する者はいなかった。
しかし規則を確認すると、わずかな条件の違いで対象かられることになっていた。
担当者たちは資料をめくった。
数字を確認した。
条件を読みげた。
そして1の同僚が言った。
「規則ですから仕方ありません」
その言で、正夫のが止まった。
会議の空気が、瞬くなったようにじた。
目のにある類ではなく、20くの台所が浮かんだ。
警察官が調べた米袋。
空になった戸棚。
2本のさつま芋。
「兄ちゃんのは?」
5歳の弟の声。
そして自分が答えた言葉。
「俺は腹減ってない」
その瞬、正夫は14歳の自分へ戻った。
学で教えられたことを信じ、決まりを破った母を警察へらせた。
自分は正しいとっていた。
実際、規則のでは違っていなかった。
だが、その正しさの結果、にはべるものがなくなった。
正夫は資料へ目を落とした。
目のの母子庭は、昭24の自分のと同じではない。
事も制度も違う。
簡単にねて考えるべきではない。
それも分かっていた。
だからこそ、正夫はだけで規則を破ろうとはわなかった。
類を閉じた。
「規則を破れと言ってるんじゃない」
会議にいた々が正夫を見た。
「この規則で助けられないなら、別の方法を探しましょう」
誰かが資料をめくるを止めた。
正夫は続けた。
「対象だから終わり、ということではないでしょう。