みかん小説
本棚

"2本のさつま芋" 第1話

24

戦争が終わって4が過ぎていたが、京の町にはまだ、戦争のがあちこちに残っていた。焼け跡だった所にはしずつしいが建ち始め、々の暮らしも以より落ち着いてきていたが、べ物だけは分とは言えなかった。

14歳の正夫は、そのの授業を終えると、教科を入れた鞄を抱えて学た。

へ帰るの途には、さな交番があった。

いつもなら、そのを何も考えず通り過ぎる。

だが、そのだけは違った。

正夫は交番のを止めた。

を見ると、制姿の警察官が机に向かって何かをいている。入りを何度かったり来たりした、正夫は拳を握りしめるようにして、へ入った。

警察官が顔をげた。

「どうした?」

正夫はすぐには答えられなかった。

喉が渇いているような気がした。学で先に当てられたよりも緊張していた。

それでも、ここまで来たのだから言わなければならない。

正夫は背筋を伸ばした。

「母ちゃんが、米を買っています」

自分の声が、っていたよりきく聞こえた。

警察官は瞬、正夫の顔を見つめた。

「お母さんが?」

「はい」

「どこで買ったか分かるか?」

正夫は首を横に振った。

「農から持って帰ってきました」

それだけ言うと、胸の奥にあった何かがし軽くなった。

正しいことをした。

広告

そうったからだった。

では何度も教えられていた。

制度を通さずに米を買うことはいけない。

取引はいけない。

これからしい本を作っていくためには、が決まりを守らなければならない。

たちはそう話していた。

戦争も、正夫はの言うことを守るように教えられてきた。国のため、族のため、みんなのためにすることが正しいと教えられてきた。

戦争が終わったは、言われることがし変わった。

これからはしい代なのだと言われた。

だからこそ、今度は自分たちが正しい国を作らなければならない。

正夫は、その言葉を真剣に信じていた。

へ帰ると、母の澄子はまだ仕事から戻っていなかった。

正夫にはに妹と弟たちがいた。

父親は戦争で帰らぬになった。

それ以来、澄子が1で子どもたちを育てていた。

は縫製所で働いていた。

て、夕方まで布を縫い続ける。

それでも、族全員が分にべられるだけのものをに入れるのは難しかった。

でもらえる米だけではりないことがかった。

特に育ち盛りの子どもが何もいるでは、事のたびに誰かがしずつしなければならなかった。

正夫はそれをっていた。

っていたからこそ、母が々どこかへかけていくことにも気づいていた。

広告

まだ夜がけきらないうちに起き、着物や帯、布など、に残っている物を呂敷に包んでていく。

き先は千葉や埼玉の農だった。

そこで米や芋と交換し、夕方になってい荷物を抱えて帰ってくる。

々はそれを「買いし」と呼んでいた。

同じようなことをしているは、町にもなくなかった。

だが、学でははっきり教えられていた。

制度を通さない米は米だ。

米を買うのは違反だ。

正夫は、そこに迷いを持つことができなかった。

の夕方。

母が農から戻ってきたのことをした。

澄子は呂敷をろすと、疲れたように腰をさすっていた。

弟たちは母の周りへ集まった。

呂敷のからてきたのは、数ほどの米と、いくつかのさつま芋だった。

「お米だ!」

幼い弟が目を輝かせた。

妹も嬉しそうに米袋を覗き込んだ。

この卓にい米が混じった飯がるのは、毎のことではなかった。

だから子どもたちにとって、そのさな米袋はごちそうそのものだった。

正夫だけがべなかった。

袋を見つめながら、胸のに学で聞いた言葉が浮かんでいた。

取引はいけません。

みんなが決まりを守らなければいけません。

正夫は母へ尋ねた。

「これ、配じゃないよね」

澄子は瞬、を止めた。

すぐには答えなかった。

正夫はもう度聞いた。

米なんだろ」

しばらくして、澄子はさく息を吐いた。

「そうだよ」

それを聞いた瞬、正夫のでは、母が何か確な違いを犯したになった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: