"消えた嫁と浅すぎる墓" 第5話
すると、すみ子の体がわずかにいた。
まだ息がある。
静の顔が恐怖で歪んだ。
「きてる……」
このままなら警察へかれる。
自分の暴力も、財産争いもすべてらかになる。
静は取り乱した。
そして、再びスコップを握った。
数分。
にはの音しか残っていなかった。
「警察へく」
静は震えながら言った。
「私がやったって話す」
ちがろうとした娘の袖を、松子がく掴んだ。
「駄目だよ」
「お母さん?」
「捕まったら全部終わりだ」
「でもんでるのよ!」
松子は墓穴を見た。
自分がんだに入るため、すでに用されていた穴。
「ここへ埋める」
静は母の顔を見た。
「何言ってるの?」
「私がねば、私の棺がに入る」
松子の目には迷いがなかった。
「そうすれば誰も掘らない」
静の背筋が震えた。
「お母さん……」
「くしな。誰か来る」
はすみ子の体を墓穴へ運んだ。
狭い穴。
さも分ではない。
膝を抱えるような状態で押し込むしかなかった。
静がをかける。
柄の着物がしずつ隠れていく。
最に顔が見えなくなった。
松子は言った。
「これでいい」
そのの昼過ぎ。
静は共同井戸でとコートを洗っていた。
たいに何度も指を入れる。
しかし袖に染み込んだ赤黒い跡は完全には落ちなかった。
「静ちゃん?」
背からの声。
静の臓がねた。
「あ……さん」
広告
「そんな寒いに何してるんだ?」
「で転んだんです」
無理に笑った。
「を落としてて」
はし議そうにしたが、それ以は聞かなかった。
午3。
ようやく正雄が帰宅した。
酒臭い。
「すみ子は?」
松子は用していた言葉をにした。
「ていったよ」
「は?」
「おが賭け事ばかりするから嫌になったって。荷物を持っててった」
正雄はし驚いた、で笑った。
「どうせ戻ってくる」
妻を探そうともしなかった。
数。
戻らないことが分かって初めて、駐所へ届をした。
そのの。
松子は急に体調を崩した。
夜になると、
「すみ子が寒いって言ってる」
そう繰り返すようになった。
「ので寒がってる」
族は認症がんだのだとった。
やがて松子はした。
葬儀の。
作業員が墓穴をく掘ろうとした瞬。
静がびした。
「やめて!」
作業員が驚く。
「まだ浅いですよ」
「それでいいんです!」
「でも棺が――」
「母の遺言なんです!」
異様な剣幕だった。
も戸惑った。
結局、松子の棺は通常より浅い位置へ納められた。
すみ子の体から、わずか30センチほど。
が戻されるまで。
静は度も墓穴から目をさなかった。
2000。
捜査はまず夫・正雄へ向けられた。
妻が消えた夫。
しかも酒と賭け事の問題があった。
疑われるのは当然だった。
別ので再婚していた正雄は、警察から連絡を受けてした。
広告
7より痩せ、髪もくなっていた。
「19921231の夜から翌朝まで、どこにいました?」
野が聞く。
「7ですよ?」
「奥さんがくなったです」
正雄は黙った。
しばらくして気まずそうに答えた。
「駅の雀荘です」
「誰と?」
の友4の名を挙げた。
すぐに確認した。
4の証言は致した。
晦の夕方から元の朝まで、正雄は雀荘にいた。
しかも負け続け、周囲へを貸してくれと騒いでいたため、全員がよく覚えていた。
「度でも抜けましたか?」
「トイレ以、にてない」
監カメラなどない代だったが、証言は極めて具体だった。
正雄のアリバイは成した。
皮肉なことに、妻を放置して賭け事をしていたという無責任さが、殺害への関与を証した。
「じゃあ……」
野は資料を見た。
当。
松子。
すみ子。
静。
3がへ入った。
正雄は。
松子はすでに。
残っているのは。
「武田静を探せ」
しかし、静の京の所には別がんでいた。
話も解約。
勤務先もすでに辞めている。
転居届も途から追えない。
「逃げたのか……」
捜査員たちは古い民票、元勤務先、友関係をつずつ辿った。
数週。
関郊の古びたアパートで、静は見つかった。
7とは別だった。
頬はこけ、髪にはいものが混じっている。
目のにはい隈。
「武田静さんですね」
刑事が声をかけると、静は逃げなかった。
ただ、さく言った。
「……とうとう来た」
青森へ戻された静は、取調で野と向きった。