"消えた嫁と浅すぎる墓" 第4話
やがて茶い封筒が現れた。
「これを見な」
からてきたのは、の売買契約だった。
松子名義の裏。
数千万円の価値がある。
実印も押されている。
しかし署名は松子の字ではない。
静は目で分かった。
「……すみ子さんの字」
「あの女、私の印鑑を勝に使ったんだ」
松子はりで震えていた。
「私が最物忘れするのをいいことに、全部売って逃げる気なんだよ」
静の顔から笑みが消えた。
彼女には京で作った借があった。
いざとなれば実のを頼ればいい。
ずっとそう考えていた。
「冗談じゃない」
契約を握る。
「私の取り分まで持って逃げるつもり?」
「だから呼んだんだよ」
松子が言う。
「正雄じゃ頼りにならない」
静は類をコートの内側へ入れた。
「、本に聞く」
「どうする気だい?」
「墓参りにくんでしょう?」
静の目が細くなった。
「そこで決着をつける」
隣から、すみ子の静かな寝息が聞こえていた。
静は暗ので、その音をじっと聞いていた。
199311。
武田には正らしい華やかさなどなかった。
正雄は帰宅していない。
松子、静、すみ子の3だけが無言で雑煮をべた。
事が終わると、松子が命令した。
「墓参りへくよ」
窓のではがっている。
「今ですか?」
すみ子が戸惑う。
「元も危ないですし、にした方が……」
「元にかなきゃがないんだよ」
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松子に逆らうことはできなかった。
すみ子はい供え物を呂敷に包み、で抱えた。
その。
静はの裏へ回っていた。
古い納から、錆びた鉄製のスコップを取りす。
布で包み、先にへ運んでのへ隠した。
3はを登った。
途、佐藤よし子とすれ違った。
「あら、静ちゃん帰ってたの?」
静は瞬でるい顔になった。
「あけましておめでとうございます」
「本当に仲のいい族ねえ」
佐藤が笑う。
「娘さんもお嫁さんも緒に墓参りなんて」
静も笑った。
すみ子だけが何も言わなかった。
佐藤の姿が見えなくなる。
静の笑顔も消えた。
先祖代々の墓で供え物を並べ、線をあげる。
すみ子が帰ろうとした。
「待って」
静がちはだかった。
「何ですか?」
「お母さんの墓も見ていきましょう」
松子もすぐ頷いた。
「そうだ。が溜まってないか見ておきたい」
墓のさらに奥。
通りのない所に、松子がに用した墓穴があった。
静は途の林からスコップを取りした。
すみ子の表が変わる。
「そのスコップ……」
「をどけるためよ」
静は笑った。
墓穴のまで来る。
逃げはだけ。
松子が背にった。
静はコートから茶封筒を取りし、のへ投げた。
から契約が散らばる。
「これ、何?」
すみ子の顔から血の気が引いた。
「……どこで」
「噌樽のに隠せば見つからないとった?」
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松子が杖を振りげた。
「私の印鑑まで盗んで!」
すみ子はずさった。
「違います。盗むつもりじゃ……」
「署名はあなたでしょう?」
静が迫る。
「を売って、で逃げるつもりだったんでしょ」
すみ子はしばらく震えていた。
だが、やがて顔をげた。
16、何を言われても俯いてきた女の目ではなかった。
「……そうよ」
静が止まる。
「私がいた」
「何ですって?」
「このから逃げるためよ!」
すみ子の叫びがに響いた。
「16もした!」
夫は賭け事。
姑からは毎のように罵倒される。
自分名義の貯もない。
働きにたいと言っても許されなかった。
「正雄さんが借を作って、このがなくなったら私はどうなるの?」
「だからのを盗むのか!」
「の?」
すみ子が笑った。
「私だって16、こののために働いた!」
料理。
洗濯。
畑。
介護。
何つ料などもらっていない。
「私にもきる権利くらいあるでしょう!」
静の顔が歪む。
「棒が偉そうに」
「京から正だけ帰ってきて、何が分かるのよ!」
すみ子は静を睨んだ。
「あんただって、こののおが欲しいだけでしょう!」
その瞬。
静のが、スコップの柄をく握った。
「黙れ!」
静がスコップを振りげた。
すみ子が目を見く。
次の瞬、鈍い音がに響いた。
すみ子の体が崩れた。
のへ倒れ込み、かなくなる。
静は自分のを見た。
何をしたのか理解できなかった。
「私……」
松子が腰を抜かしていた。
「静……何てことを」