"ハワイへ行った夫の離婚届" 第4話
しし、次に直を探した。
寝にはいない。
トイレにも呂にもいない。
駐を見ると、直のもなくなっていた。
「どこったの……?」
スマートフォンを取りそうとした、ダイニングテーブルのにい封筒が置かれていることに気づいた。
私の名がかれていた。
嫌な予がした。
封をけると、には婚届と便箋が入っていた。
婚届には直自の氏名や本籍など、記入できる欄だけがすでに埋められていた。妻である私の署名欄と証欄は空のままで、どうやら「自分の分はいたから、残りはそっちで用しろ」ということらしかった。
便箋には、もっと信じられないことがかれていた。
〈美へ。
婚しよう。
もう緒に活するのは無理だとう。
俺は今から1週旅へく。
帰ってくるまでに婚届の続きをめておいてくれ。
父さんのことは婚したも面倒を見てほしい。
今さら環境を変えると混乱するだろうし、美に番慣れてるから、その方が父さんのためにもいいとう。
直〉
最初はが理解できなかった。
婚する。
旅へく。
それでも自分の父親の介護は続けろ。
何度読み直しても、そういてある。
が震えた。
私はすぐ直へ話をかけた。
数回呼びした、ようやくつながった。
周囲にはアナウンスらしい音が響いていた。
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「直、今どこ?」
「空港」
「空港?」
「ああ。これから乗るからないんだけど」
「、見たわ。どういうなの?」
直はため息をついた。
「いてある通りだよ」
「婚したいなら、話しうのが普通でしょう。突然を置いて旅って何?」
「帰ってから話しても同じだろ。それに俺はもう決めたから」
「誰と旅するの?」
瞬、話の向こうが静かになった。
「おには関係ないだろ」
「まだ夫婦よ」
「どうせ婚するんだから同じだ」
私は唇を噛んだ。
「お父さんはどうするつもりだったの? 私が今戻らなかったら?」
「戻るって分かってただろ」
「だからって……」
そのだった。
話の向こうから、女性の声が聞こえた。
「直、もうこうよ。搭乗始まっちゃうよ」
若い女性の声だった。
私の体から、すっと血の気が引いた。
「今の誰?」
直は答えなかった。
「誰とくの?」
「だから関係ないって言ってるだろ。俺、もう切るから」
「待って!」
「帰るまでに考えといて。じゃあな」
話は切れた。
何度かけ直しても、そのは源が入っていなかった。
私は子に座ったまま、しばらくけなかった。
介護が始まってから、私は直のをほとんど気にしていなかった。
正確には、気にする余裕がなかった。
帰宅が遅くても仕事だとった。
休にかけても、介護から逃げて遊びにっているのだと腹をてるだけで、それ以のことは考えなかった。
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でも、もし。
私が義父の排泄を伝い、呂へ入れ、夜に徘徊しないよう見守っていた、夫は別の女性と会っていたのだとしたら。
胸の奥から、りより先に悔しさが込みげてきた。
私は机のに顔を伏せた。
会社を辞めたのも、義父の介護を引き受けたのも、夫婦で支えるという直の言葉を信じたからだった。
それを利用するようにで浮気をして、最は父親まで私に押し付けて旅へった。
涙が止まらなかった。
そのだった。
「……美さん」
背から、かすかな声がした。
私は驚いて振り向いた。
義父が廊にっていた。
最の利さんは、私を息子の妻だと理解できないもかった。「お姉さん」「先」と呼ばれることもあり、名を正確ににすることはほとんどなくなっていた。
それなのに、そのは確かに言った。
「美さん」
「お父さん……?」
義父はすりを握りながら、ゆっくり私の方へ歩いてきた。
「泣いてるのか」
私は慌てて涙を拭いた。
「丈夫です。ちょっと……疲れただけです」
義父はしばらく私の顔を見ていた。
その目は、議なほど穏やかだった。
認症には、によって症状がきく変わることがある。数分のことを忘れてしまうもあれば、昔の記憶や周囲の状況を驚くほどはっきり理解しているが訪れることもある。
そのの義父は、まるでがしだけれたようだった。
「、さん来るか?」