"貧乏人と呼ばれた食卓" 第4話
「そうですけど。どうして父の名を?」
隆志は数秒黙り、やがて「いや、確認しただけだ」と答えた。
その夜、夫は珍しく眠るまで斎からてこなかった。
そして私は、閉じた扉の向こうから再び聞こえた名に息を呑んだ。
「幸介……やっぱり度、おと話しておくべきだったかもしれない」
連休2目の夕方、私は台所で夕の準備をしていた。昼にしべ過ぎたため、夜は焼き魚と野菜の煮物、奴、それから匠の好きな豚汁という軽めの献にするつもりだった。隆志と息子たちはリビングで野球継を見ており、美だけが蔵庫からみ物を取るため台所へ入ってきた。
「今の夕飯、何ですか?」
「焼き魚と豚汁よ。お昼がかったから、夜はしあっさりしたものにしようとって」
美は鍋のを覗き込んだあと、骨につまらなそうな顔をした。
「また作りなんですか」
「またって?」
「昨からずっとこういうのですよね」
私は包丁を置き、美を見た。彼女はリビングの方を度確認してから、声をくした。
「せっかく3連休で来てるんだから、級寿司とかしてくれません?」
「お寿司がべたいなら、そう言ってくれれば――」
「あんたの作りとか無理だから級寿司せよ、貧乏」
瞬、何を言われたのか理解できなかった。
美は笑っていた。声で鳴ったわけでも、になったわけでもない。
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だからこそ、その言葉が冗談ではなく、彼女のに以からあった本音なのだと分かった。
「……貧乏って、あなた」
自分でも驚くほどきな声がた。
リビングのテレビの音が止まり、匠と徹、そして隆志が斉にこちらを向いた。美は瞬だけ焦った表を見せたが、すぐに肩をすくめた。
「何でもないです。お義母さんがちょっと勘違いしただけ」
「勘違いじゃないでしょう。今、私の料理なんか無理だから級寿司をせ、貧乏って言ったわよね?」
「ちょっとした冗談ですよ」
美は笑ったままだった。
徹が真っ先にちがった。
「冗談?」
その声には、普段のるさが微もなかった。以から美を警戒していた徹にとって、今の来事は自分の直が正しかったことを証するものだったのだろう。
「母さんに向かってそんなこと言って、冗談で済むとってんの?」
「徹君には関係ないでしょ」
「あるよ。俺の母親だ」
「徹!」
匠が弟を制した。しかし徹は止まらず、美に詰め寄ろうとしたため、私が慌てて2のへ入った。
「やめなさい。鳴りっても仕方ないでしょう」
匠は顔を赤くしながら美を見た。
「本当に言ったのか?」
「だから冗談だって」
「なんでそんな冗談を母さんに言う必があるんだよ」
それまで余裕を見せていた美の顔から、次第に笑みが消えていった。
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追い詰められたとじたのか、彼女は腕を組み、今度はき直るように私を見た。
「じゃあ本当のこと言えばいいんですか?」
「美」
「だって、お義母さんって昔すごく貧乏だったんですよね?」
部の空気が変わった。
私は匠を見た。息子は目を伏せ、私のいちについて美へ話したのは自分だとさく認めた。私が苦労した分、に優しい母親なのだと説したつもりだったらしい。
美はそんな匠を見ても止まらなかった。
「児童施設にもいたんですよね。それ自体は別に悪いとってませんよ。でも私、結婚するならそれなりののがよかったから」
「何を言ってるんだ」
匠の声が震え始めた。
「匠君は流企業だし、お義父さんは会社経営者だから、まあいいかなってったんです。でも正直、お義母さんみたいなが姑なのは最悪だとってました」
私は胸を殴られたような気がした。自分の貧しい過を恥じたことはないつもりだったが、息子の妻から「最悪」と言われると、幼い頃の自分まで否定されたようにじた。
徹はりで拳を握っていた。
「兄ちゃんと結婚したのも、肩き目当てだったのかよ」
「そんなこと言ってないでしょ」
「さっきから言ってるのと同じだろ」
「うるさいなあ。あんたには関係ないって」
美は徹を見て、ふっと笑った。
「まあ、顔だけなら徹君の方がタイプだけど」
徹の顔が変わった。匠は妻を信じられないものを見るような目で見つめ、私もあまりの言葉に何も言えなくなった。